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北海道民と「がん」
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第5回目は北海道民と「がん」と題し、全国でもがん死亡率の割合が高い北海道の現状について、北海道民の特性から考えられる理由などを、日本医療大学 総長の島本和明先生に伺いました。


島本 和明氏
日本医療大学
総 長
日本高血圧学会名誉会員
医学博士
北海道民と「がん」
日本人の死亡原因の第1位が「がん」であることは知っている方も多いでしょう。しかし、都道府県別のがん死亡率を見ると、北海道は全国でもがん死亡率の割合が高く、
2022年の厚生労働省「人口動態調査」(※1)では、対人口10万人あたりの死亡率が全国第3位となっていることは知っているでしょうか。今回は北海道民と「がん」についてお伝えします。
※1: 2022年に公開された厚生労働省「人口動態調査」より引用
全国トップクラス、北海道民のがん死亡率
肺がんは女性で全国ワースト1、男性はワースト2
北海道民のがん死亡率は、全国でもトップクラスにあります。さらに、がんの種類別で比較すると、2020年の国立がん研究センター・がん情報サービス「がん登録・統計」(※2)によると、肺がんの死亡率は女性で全国ワースト1、男性はワースト2となっています。これには道民の喫煙率の高さが挙げられ、特に女性の喫煙率は、長年にわたって全国的に最も高くなっていることが要因の一つになっていると考えざるを得ないのです。
※2: 2020年に公開された国立がん研究センター・がん情報サービス「がん登録・統計」より引用
がんの主な要因は「生活習慣」と「感染」
がんは、さまざまな要因によって発生すると考えられています。国立がん研究センターによると、日本人では、男性のがんの43.3%、女性のがんの25.3%は「生活習慣」や「感染」が原因になっていると考えられています。(※3)
「生活習慣」には、喫煙、多量飲酒、塩分過多、過体重・肥満など、実にさまざまな要因があります。中でも特に大きな原因と考えられているのが「喫煙」です。喫煙は肺がんをはじめ、食道がん、胃がん、大腸がんなど、多くのがんの原因にもなっていると言われているほか、心臓病などの動脈硬化にともなう病気や、慢性閉塞性肺疾患(COPD)をはじめとする呼吸器の病気にも大きく影響しています。

「感染」については、肝臓がんの肝炎ウイルス、子宮頸がんのヒトパピローマウイルス(HPV)、胃がんのヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)などがあります。例えばピロリ菌は、近年、除菌治療が普及し、胃がんの罹患者数や死亡者数は徐々に減少傾向にあります。
しかし、ピロリ菌を除菌しても、喫煙をはじめ、塩分過多や多量飲酒など、北海道民に多い、良くない生活習慣を続けていると、胃の粘膜は傷つけられ、それによって胃炎を起こしやすくなり、さらには再びピロリ菌が生着し繁殖しやすい状態を作ってしまうことにもなりかねないのです。子宮頸がん予防のために、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種を受けることも重要です。
※3: 国立がん研究センター「がん情報サービス」より引用
発見の遅れも
がん死亡率が高い理由
北海道は、がん検診の受診率も全国平均と比べて低い状況となっています。そのため、がんが見つかったときには、かなり進行した状態であることも少なくありません。そのことも死亡率の高さにつながっていると考えられます。特にここ数年はコロナ禍の影響で外出を控える方が多かったこともあり、がん検診の受診率はコロナ禍前よりも若干ではありますが低下傾向にあり、全国平均との差はさらに拡大しています。(※4)
※4: 国立がん研究センター「がん情報サービス」で公開されている「がん検診受診率」データより参照
がんで亡くならないために。
できることから始めませんか?
がんの発生要因には予防できるものも多く含まれています。喫煙される方は禁煙をする。塩分過多や多量飲酒などの良くない生活習慣に気を付ける。治せる早期のがんを見つけるためにもがん検診を受ける。これらは、がんと向き合う上で最も大切であることは明らかで、誰もが今からでもできることではないでしょうか。
がんは日々の生活習慣の心掛けで、発症リスクを抑えられる場合もあります。ですが、一番大切なのは、定期的にがん検診を受けることにあります。がんを早期に発見でき、早期に治療を開始したことで、がんと上手に付き合いながら元気に暮らしている方も多くいます。他人事とは思わず、この機会に「検診」を検討してみてください。次回は「バランスのよい食事」についてお伝えします。
※掲載情報は2024年8月16日時点のものです。