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北海道の地域性とも関わっている「高血圧」
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第2回は「高血圧について」と題し、その発症リスクを高める要因の多くが、寒冷地という北海道の地域性とも関わっていることや、高血圧の治療がなぜ必要なのかについてなど、日本医療大学総長で、日本高血圧学会の名誉会員でもある島本和明先生に伺いました。


島本 和明氏
日本医療大学
総 長
日本高血圧学会名誉会員
医学博士
高血圧について
北国ならではの長い冬の季節を終え、北海道もようやく本格的な春を迎える時期となりました。冬期間は室内にこもりがちで運動不足になっている方も多いでしょう。
ちょっと血圧を測ってみませんか?もしかしたら、昨年の冬前より高くなっているかもしれません。今回は「高血圧」についてお伝えします。
症状がなく、気付いたときには脳卒中や心筋梗塞、
腎臓病を合併している怖い病気
高血圧は、日本人に最も多い生活習慣病です。
この病気の一番怖いところは症状がないということです。知らないうちに10年、20年、30年とかけて血管や臓器を傷つけていき、気付いたときには脳卒中や心臓病、あるいは腎臓病といった病気の原因になってしまいます。
高血圧の多くは、高血圧となる基礎疾患をもたない原因不明の「本態性高血圧」で、遺伝的要因が60%とされ、残りの40%は環境因子で、中でも大きく影響があるのが「食塩の摂取」です。最近では「肥満」の影響も大きいとされ、「運動不足」も大きく関わっています。
このほかにも、ストレス、飲酒、喫煙、さらに寒冷も血圧をあげる要因となります。
目指せ! 1日の塩分摂取7g
野菜をたくさん食べる食生活も大切
平成17年度・23年度・28年度に公表された「国民健康・栄養調査」(※1)と、「健康づくり道民調査」(※2)の結果データを参照すると、道民の食塩摂取量は年々減少傾向にはあり、全国平均と同水準か若干高い程度となっています。
しかし、厚生労働省の2024年度からの国民健康づくり計画「健康日本21(第3次)」で掲げられている1日当たりの目標摂取量7gに対して、道民の食塩摂取量10~11gという数値はまだまだ程遠いと言えます。
しかも道民の食生活は、過剰に摂取した食塩、いわゆるナトリウムを排出する働きがあるカリウムを多く含む野菜の摂取量が不足していることも問題となっています。
※1:平成17・23・28年度に厚生労働省より公開された「国民・栄養調査」より引用
※2:平成17・23・28年度に北海道から公開された「健康づくり道民調査」より引用
冬場の運動不足を解消しましょう
一歩でも多く毎日歩く。運動の習慣づけを
運動不足についても、日常生活における歩数に関するデータで比較すると、道民は男女とも全国平均を下回り、年々減少傾向にもあります。肥満の基準となるBMI値25以上という、肥満者の割合も男女ともに全国平均を上回っています。
そして道民にとって最も特徴的と言えるのが、北海道は寒冷地であるということです。しかも冬になると外に出て動く機会が減るため、運動不足にもつながっています。このように血圧に悪さをする要因が、北海道には地域性としてあるということが言えるのです。事実、高血圧の患者さんの割合も、男女ともに全国平均を上回っていて、最近はさらに増加傾向にあるのです。
将来の自分の健康のためにも
血圧を測ってみませんか?
高血圧になるのは地域性だからと諦めないでください。一つ言えることは、これらの要因のほとんどは自分で管理できるということです。
①食塩の摂取量を控え、野菜を多く摂取する。
②日常生活における歩数を少しでも増やすよう、特に冬場は運動不足にならないよう心掛ける。
③節酒や禁煙も大切です。
何より問題なのは、「血圧は少しくらい高くてもそれほど怖いものではない」と思っている方が意外と多いことです。今は何も症状がないから大丈夫だとは思わないでください。高血圧を治療する目的は、今の自分のためというよりも、将来の自分のために必要なことだということを知ってください。
皆さんは血圧をちゃんと測っていますか?最近いつ測られましたか?健康診断は受けていますか?ぜひ血圧を測ってみてください。病院で測る血圧では140/90以上、家庭で測る血圧なら135/85以上で高血圧です。そして血圧が高いと言われたら、生活習慣の改善や、必要であれば病院で治療を受け、高血圧がリスクとなるような病気にならないよう、正常な血圧を守るための日常生活を意識してほしいと思います。
高血圧は放置すると、その先脳卒中・心臓病・腎臓病・認知症などの病気の原因になります。健康で笑顔の多い毎日を過ごすため、日々の運動や食生活をしっかり見直して、毎日血圧測定をする習慣を身に付けたいと思います。次回は忙しい人におすすめしたい「分割食」についてお伝えします。
※掲載情報は2024年5月17日時点のものです。