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我が町のぬくもりステーション vol.8

我が町のぬくもりステーション vol.8「南・中空知エリア」

こちらに掲載されている記事の、ポイント獲得・抽選応募期限は終了しております。

明日の活力を充電 ―我が町のぬくもりステーション―

地域で愛されているカフェ、帰省のたびに訪れたくなる食堂…そう、そこは、住民たちの憩いの場。明日への活力を充電できるオアシスです。笑顔が生まれる、町の「元気の象徴」である店を、月刊誌HO取材陣が、毎月各地域の市町村を訪ねご紹介します。


第八回は、南・中空知地方です。


1軒目 美唄「安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄 カフェアルテ」

炭鉱で栄えた美唄市の炭鉱住宅街で、1949年に創立した旧美唄市立栄小学校。
1973年に最後の炭鉱の灯が消え、1981年に閉校しました。

「炭鉱で栄え、衰退したこの土地の記憶と人々の思いを受け止め、積み重ねられてきたかけがえのないこの空間を、未来へと繋いでいきたい」
朽ちかけた旧栄小学校跡地をアートスペースとして新たに息を吹き込み、人々が憩う場として生まれ変わらせたのが、美唄市と美唄市出身の彫刻家、安田侃(かん)さんです。

「安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄」は、屋外の彫刻5点からスタートし、今年で25年目を迎えました。
現在40点ほどの作品が屋内外に点在していますが、今も進行形で作り続けられています。

誰もが懐かしさで胸がいっぱいになる、木造の校舎や体育館。季節ごとの美しい自然と調和する彫刻の魅力に惹かれ、今では全国各地から多くの人が足を運ぶ場所となりました。

ここに展示されている彫刻は、ほとんどが触れていいものです。
日が照ると温かく、曇りの日は空気の冷たさそのままに。見て触って、その時々で感じられる作品は心に染み入るようです。

学校の一部は今でも園児が通う幼稚園。安田さんは無邪気に遊ぶ園児たちを見て「子どもたちが、心を広げられる広場をつくろう」と思ったことが、この場所を作るきっかけだそうです。
玄関に置かれた作品、みんな朝も帰りも触って、大人になっても思い出すのでしょう。

「アルテピアッツァは幼稚園でもあり、彫刻美術館でもあり、芸術文化交流広場でも、公園でもあります。誰もが素に戻れる空間、喜びも哀しみもすべてを内包した、自分自身と向き合える空間」と安田さんの言う通り、25年の時を重ね多くの地元や近隣の人々が安らぎの時間を求めこの場所にやってくるようになりました。

あ、リードをぐいぐい元気なワンちゃん。まだ家族になって間もない5か月の女の子ですって。名前ははるちゃん。

「いつもはここで、僕がリードを引きながら写真を撮るんだけど、今日は妻と一緒なのでカメラに専念できます」と楽しそうな地元のご夫婦と一匹。どうぞごゆっくり。

さて…そろそろお茶にしようかな。敷地内にある「カフェアルテ」に向かいます。
校舎から丘を登っていくと見えました。 木のアプローチを進んでいくと…

天井が高く、広々とした空間が広がっていました。
薪ストーブもパチパチと燃えて、暖かです。
今日は土曜日、たくさんの人がくつろいでいます。

ハンドドリップで丁寧に淹れるコーヒーがとてもいい香り。
「これから、冬のゆっくりとした雪景色のカフェもいいですよ。本を読んだり、ぼーっと外を眺めてみたり。1日ゆっくり過ごしていただけます」
と、職員の影山宏明さん。

大きな窓に向かった席は特等席。
「故郷にこんなにいいところがあって、うれしいです。帰ってくるたびここに寄ります」と、今は関東在住の女性。旦那さんと一緒に里帰り中なんですって。

「ひとりでよく来ます」という女性客も。
ゆっくりと本や写真集を見ながら、くつろいだ時間を過ごしていました。

コーヒー500円と一緒に、名物の「ポコポコぱん」はいかが?
プレーン80円、シナモン90円。
カフェが出来たときから変わらないこの香り。
札幌の名店、斎藤珈琲のオリジナルブレンドにとっても合うのです。

スタッフ手作りの日替わりパウンドケーキ200円も人気があります。
この日は抹茶。ほかにリンゴなどもありますが何があるかは、その日のお楽しみです。

実は…カフェとつながるもうひとつの空間があります。

そこは「ストゥディオアルテ」
ここで毎月第1土・日曜に行われる「こころを彫る授業」
多くの人の反響を呼んでいます。
1日かけて真っ白な白大理石か軟石を使って、自身の「こころ」を彫ることに挑む授業です。
ノミや金づちで一心に彫っていくと、いつしか自分の「こころ」が見えてくる。
そんな授業、ぜひ今度は受けにきてみたいな。

さて、午後も3時を過ぎるとカフェもちょっと落ち着いてきました。
カウンターの指定席に座るのは常連のお二人。
カメラを持って石狩から通っているという男性、奥の男性は美唄の方で、コンサートでギターを演奏しに来て以来とても気に入って、よく来るようになったそう。

二人はスタッフの方を介してカフェでよく話すようになったんですって。
まさにアートが人と人をつなげる場所ですね。

一人の時間を楽しんだら、笑顔で迎えてくれる、この和やかなカフェで素敵な時間を分かち合いませんか?

安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄内
カフェアルテ
美唄市落合町栄町
電話 0126-63-1010(カフェ)
営業時間 10:00~17:00(11月中旬~3月中旬の平日は~16:00)

安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ
入場無料(任意で寄付をお願いしています)
開館時間 9:00~17:00
休館日 火曜、祝日の翌日(日曜日は除く)、12月31日~1月5日

●「こころを彫る授業」は毎月第1土・日曜
※都合により、日程が変更になる場合もあります。(申し込み多数の場合抽選となります)詳しくはHPをご覧ください。
http://www.artepiazza.jp

2軒目 夕張「そば処 吉野家」

夕張といえば…映画祭。毎年夕張市内を会場に、メジャーからインディーズまで幅広い作品を上映し、新しい才能の登竜門としても注目されています。
来年3月15~19日に行われる「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」で、なんと28回目を迎えます。

観客とゲストの距離が近く、夕張市民が温かくもてなしてくれる世界でも類をみないアットホームな映画祭として、国内外の映画関係者や映画ファンに愛されています。

そんな映画関係者やファンも多く訪れる人気のお店があるんです。

夕張市役所のすぐそばにある「そば処 吉野家」
お昼時はこの通り大忙し。
駐車場も車でいっぱいです。

ぽかぽかお天気のこの日は、外で順番待ちの人もいました。
「おばあちゃんが夕張出身なんです」「このお店は昔からあってね。懐かしいねぇ」
と札幌からきた二人。

そうなんです、こちらは夕張で一番の老舗。
創業は1929年。昭和初期から続く89年の歴史あるおそば屋さんです。
店内には24年前に建て替わる前の写真が飾られていますが、懐かしむ人が多いそう。

あ、またお客さんがやってきたみたい。
格好いいバイクですね~。

店内は大にぎわい。

次から次へと注文が入るのは…
おっとっと!

丼のフチから盛り上がる、すごい表面張力!
なみなみと注がれた、夕張名物の「カレーそば」750円。
過酷な労働だった炭鉱マンたちに愛された夕張のソウルフードです。
市内の飲食店が「夕張カレーそば協議会」を結成し、各店でカレーそばを出すようになりました。
各店独自の工夫を重ね、それぞれ違った味わいがあります。
カレーそばめぐりを楽しみに夕張にやってくる人も多いのですよ。

先ほどのバイクの二人も、やっぱりカレーそば。
「室蘭からきたんだけど、親しみを覚えます。室蘭はカレーラーメンが地元の味だしね」
地図を広げて、旅の相談をしながらカレーそば。
っていうのもいいですね。

食べてみると、具は玉ねぎと豚肉だけととてもシンプル。だけど、このつゆがクセになります。そばにもよくからみます。しかも、今日は覚悟してカレー色のシャツを着てきたのに、ぜんぜんはねません。絶妙のとろみにビックリ。

このカレーそばを作ったのは4代目の高橋一太さん。
夕張カレーそば協議会の会長さんでもあります。
カレースープは作り置きせず、注文を受けてから作るのでスパイスの香りも際立ちます。

独特の旨味のアクセントは、この手作りのエビ油。
甘えびを揚げて手作りしています。

それにやっぱり、この伝統のそばたれがベースにあってこそ。
カツオと煮干し、昆布だしが効いた秘伝のそばたれです。

シメにぜひ、ごはんを。最後までスープを楽しめますよ。

メニューはほかにも通常のそばのほかに、夕張の長いもを使ったとろろそばや、地元の人に人気の豚肉やタケノコがたっぷり「らー油肉盛りそば」850円などもおすすめです。

「そば本来の風味を消すから、カレーそばは絶対に作ってはだめ」と、先代に言われてきたという一太さんの父・伸一朗さん。
当時の市の観光課から「夕張の町おこしのために一役買ってほしい」と頼まれ、店で出すことを決断し、一太さんにまかせてオリジナルのカレーそばを作り上げました。
今ではこのカレーそばをきっかけに、夕張ににぎわいを生む店として多くの人に親しまれています。

「昔からずっとある店はうちが唯一。“ああ、ここは変わらずあるんだな”と喜んで思い出話を咲かせてもらえるように、長く続けていきたいですね」と一太さん。

ちなみに…映画のまち、夕張らしいエピソードをお聞きしましたよ。
実は伸一朗さんは、夕張が舞台となった1977年公開の映画「幸福の黄色いハンカチ」で、主演の高倉健さんと一緒に映画のスクリーンに登場しているのです。
エキストラとして、健さんを車に乗せて送る友人役だったそう。

映画のラストシーンが撮影された夕張の炭鉱住宅の長屋は、「幸福の黄色いハンカチ想い出ひろば」として保存され、多くの人が訪れています。

今年は映画公開から40年を迎え、施設はリニューアルされました。
現在冬季休業中ですが、来年の春は訪れてみますね。

黄色いハンカチがたなびく、炭鉱住宅の長屋の帰りにはぜひ、ハンカチと同じ黄色のおいしいカレーそばを食べにまた寄ります。

そば処 吉野家
夕張市本町4丁目54番地
電話 0123-52-2448
営業時間 11:30~15:00頃(材料がなくなりしだい閉店)
定休日 火曜、不定休あり(要問い合わせ)

幸福の黄色いハンカチ想い出ひろば
http://yubari-hankachi.com

3軒目 栗山「焼肉 大番」

栗山の駅に着きました。
栗山といえば、蔵もある酒どころ。それにきびだんご!
名物がいろいろあるけど、駅からほど近いところに、長年親しまれている店があるんですよ。

駅からぶらりと徒歩5分ほど。駅前通りから路地に入るとありました。
「焼肉 大番」です。
暖簾が出ていないと、ほかに看板もないので気が付かないだろうな。
隠れ家のような店にわくわくします。

お店を営むのは3代目店主の石丸宜嗣さんとさとみさん夫妻。
さとみさんは8か月の雪斗ちゃんを抱っこしながら仕込み中です。
もうひとり6歳のお兄ちゃん、音温(おとはる)くんは、2階の自宅でおばあちゃんとお留守番しているそう。
そういえば昼間にお電話したとき、お兄ちゃんがしっかりと受け答えしてくれましたよ!

さて、こちらのお店は七輪で焼肉を楽しみます。
レジ横には、炭火をおこすスペースがありました。

今日はこれから宴会の予約が入っているので、次々に炭をおこし、赤々と燃える七輪の準備中。

いよいよ宴会がスタート!
今晩は長年の常連さん、栗山スキーパトロールのみなさんの集まり。
「もうすぐ始まるスキーシーズン前の決起集会みたいなものだよ」
もくもくジュージュー、炭火の香りと煙が途端にたちこめ、たまりません!
活気があります。

この店の定番メニューは開店当時から60年以上続く、伝統の味噌だれで味付けをしている、「ホルモン」「ジンギスカン」

たれなどキッチンを担当するのはさとみさん。
先代から受け継いだ秘伝の味噌だれを、2~3日置きに大量に仕込みます。
このたれで、オーダーが入ってから肉に下味をつけるそう。

カルビやサガリなど用には、赤ワインとフルーツなどを合わせる醤油ベースのオリジナルのたれも準備しています。

それにしても、みなさんうれしそう。

香ばしい味噌だれの香り、箸が止まりません。
「こっちにおかわりね!それにショウガ」「ニンニクちょうだい」
なんて声も飛んできます。
すりおろしの生の薬味もお好みで頼めるそう。
「昔からずっとおいしい、ここの味が本当にいいんだよね」
先代の石丸さんのお父さんも、かつてこのメンバーのひとりだったそうです。
「そのときから、もうずっと何かと来てくれるんですよ」

あ、今日はパークゴルフもしたそうです。
上位入賞おめでとうございます!景品は何かな?
盛り上がってます。

こちらの男性は日本酒で一杯。
「僕は『北の錦』愛好会の世話人。どんなときも日本酒だよ」
地元が誇る、北海道米100%のお酒を造っている「小林酒造」のお酒も、一緒にいただけます。

さて…そろそろ私も旅の一人焼肉タイム。
こちらでは先代が発明した、七輪を埋め込んだおひとりさま用カウンターがあるのです。
「先代の父のアイディアで珍しがられますね」と石丸さん。

焼肉は全部で13種類ほどありますが、やっぱりまずはこれを食べたい!
1人前「ホルモン」は340円、「ジンギスカン」は470円。お手頃です。

ここでは「おひとりさま」が流行るずっと前から、1人焼肉ができたのです。
それにしても、う~ん。味噌だれが香ばしくてとてもおいしい!

テーブルにはカツオだしが置いてあり、地元の人たちはだしや辛みそをといて焼肉につけて楽しみます。
だしだけで食べるとあっさりとして、また違った味わいが楽しめます。

シメは「石焼チーズビビンバ」が人気です。

満足、満足。
また今度も、地元の人にまぎれて、一人焼肉にやって来ますね。

焼肉 大番
夕張郡栗山町中央2丁目152
電話 0123-72-0769
営業時間 17:00~22:00(L.O.21:30)
定休日 不定休 ※12月31日~1月4日はお休み

4軒目 三笠「まんぷく」

三笠にやってきました。
かつて炭鉱で栄えた町ですが、今は全国から注目されるワイナリーがあり、温泉や直売所が集まる道の駅も人気なんですよ。

そんな町の中心地、三笠市役所前にある食堂が「まんぷく」

昼も夜も地元の人が足しげく通う店です。
訪れたのは土曜日の夕方。
ふわりと明かりがともる素朴な看板に、思わず引き寄せられます。

店に一歩踏み込むと、おぉ~。
すでにカウンターもお座敷も埋まっています。
食事をしたりお酒を飲んだり、みんな思い思いに和やかな時間を過ごしている。

あ、端に座っている男性。お刺身やおかずが、きちんと並んだ食事がとてもおいしそう。

お酒もきれいに並んでる。
「ウイスキーとビール、ビールのトマトジュース割り。トマトジュースは野菜不足解消のためなんです。独り身なので夕ごはんはいつもここ。おまかせで出してもらっているんです」

こちらの男性もボリューム満点の定食がすごい。
「何を食べてもおいしいですけど、今日は肉食男子の気分なんで。ここには仕事明けにいつも来ます」

店を切り盛りしているのは、この店の2代目、成田真理子さん。
どんなに忙しくても、朗らかに迎えてくれます。
みんな、この笑顔にほっとするのでしょうね。

くるくると手際よくたくさんの料理を作っている成田さん。
愛用の包丁も、同じ種類とは思えないほど刃が減っています。

「ここはね。ほんとママがよいのよー。知らない人が隣同士でもママを通して仲良くなれるのよ。料理もとってもおいしいし。今お願いして天ぷらあげてもらってるの!」
忙しいときはそれぞれセルフでビールを注ぐこともあるんですって。
さすが、常連さん。

開店は1962年、三笠が炭鉱でにぎわっていた時代。
成田さんのご両親は青森から桂沢ダムの建設工事のため三笠にやってきて、工事終了後1957年にこの場所に家を建てたそうです。
肉屋などを経て、食堂を開いたのはその5年後。
以来多くの炭鉱マンやその家族がまんぷくになれるよう、親子2代で腕をふるってきました。

それにしても、ご両親、俳優さんみたいにすてきですね。

「お母さん、美人よね」
と一緒に写真を見ていた二人。老人クラブのお友達で、今日は食事にやってきました。
古くからこの店に通っているそうです。

「おなかすいたでしょ、ハイどうぞ」

カメラマンさんにもおすそわけ!

店の顔的存在はラーメン。
「まんぷくラーメン」の醤油650円。
ゆで卵がまるごと入っています。鶏ガラと豚骨をじっくりと煮込み、ちょっと白濁したスープはあっさりとして、とてもおいしい。
「懐かしい昔風のラーメンとよく言われるんですよ」
時々無償に食べたくなると、市外からやってくるファンもいるそうです。

もうひとつ、真理子さんの代になってはじめた人気のメニューがあるのです。
それが「ホルモン鍋定食」850円。
軟らかなホルモンは1人前150g。どっさり入っているので食べごたえがあります。
たっぷりと入れた生姜が効いた味噌味がまろやかです。
かつおだしをきかせたみそ汁と、味噌ラーメンのスープがベースなんですって。
どうりでとっても優しい味わい。半熟の卵をからめるとまたおいしい。
ごはんにもよく合います。

珍しい郷土料理「なんこ」もありますよ。
なんこは三笠や歌志内でよく食べられた炭鉱の町ならではの味。かつて石炭を輸送する手段として馬が使用され、役目を終えた馬の腸を使用したのが始まりだそうです。

「まんぷく」にはたくさんのメニューがありますが、焼肉もあるんですね。
「今日はこれから予約が入っているんですよ~」
味付けのもみだれも手作りで、ジンギスカンやホルモンも評判の味。

右手の奥から3番目は、実は成田さんの息子さん。
今日は息子さんの職場の方たちの飲み会だそうです。

ここはまさに地元の人々になくてはならない憩いの場。
常連さんとのおしゃべり、とても楽しかったな。
ほのぼのと地元気分を味わいに、また寄らせてくださいね。

まんぷく
三笠市幸町6−11
電話 01267-2-2429
営業時間 11:00~14:00、16:30~21:00
定休日 日曜

5軒目 岩見沢「三船」

かつて、多くの炭鉱に囲まれ、石炭を運ぶための鉄道交通の要であった岩見沢。

1884年に官営幌内鉄道の駅として開業した歴史ある岩見沢駅舎は、全国初の公募型コンペを経て2009年にグッドデザイン賞も受賞したモダンな佇まいの駅舎に生まれ変わりました。

駅からすぐ近くには「そらち炭鉱(ヤマ)の記憶マネジメントセンター」もあります。空知の「炭鉱の記憶」の情報拠点であり、資料や本がそろっています。
カフェスペースもあり、スタッフがいろいろと情報を教えてくれます。
広々とした事務所は1927年に建てられた歴史ある建物。併設する1909年に建てられた石蔵ではイベントや展示が行われるので、ぜひ立ち寄ってみてください。

さて、どんどん日が暮れるのが早くなってきましたが、目的の店に向かうとします。
と言っても駅の隣、バスターミナル前の路地にあるのが、創業から52年となる「三船」です。
1965年から変わらずこの場所にあるそうです。

どんどん人が吸い込まれていく人気店。

実は午後3時から開店しているのですが、なぜでしょう。
国鉄岩見沢操車場など多くの鉄道施設があった岩見沢。
国鉄職員が仕事終わりに通っていたころから続いているそうです。
今も早い時間から次々とお客さんが訪れています。

さて、扉を開くとすでにたくさんの人でいっぱい。
昭和の香り漂う店内には炭火と焼き鳥のいい匂い。
お皿に山盛りの焼き鳥も、次々に運ばれています。
常連さんによると「ひとり20本近くは軽く食べられちゃう」らしいのです。

入り口のすぐ横にある焼き台に、多い時はずらりと60本。
多い時は、1日になんと2000本近く焼くそうです。

お客さんの6~7割は、予約で持ち帰り。一人100本はあたりまえなのだそう。
時にはこんな大量のときもあるんですよね。
スゴイ!

焼き鳥は「精肉」「モツ」、どちらも1本100円の2種類塩味のみです。
丸いキンカンが見えるでしょ?

ここは炭鉱町の伝統の味、美唄焼き鳥の店です。
初代は美唄の出身で、美唄焼き鳥の元祖「三船」で修業し、本店から暖簾分けしてもらった唯一の店。

一羽の鶏を大切にモツまですべて食べきります。
モツ串には砂肝やレバー、キンカン、鶏皮、玉道(たまみち)、心臓、精肉がランダムにささっています。一度湯がいて、1本1本串を打つ仕込みの作業の中心は2代目の太田幸一さんと美智子さん。朝8時からはじまり、7人の専任のパートさんとともに夕方までかかるそうです。

夜は3代目の息子さんたちが中心となって店を守っています。
持ち帰りの準備をしているのが長男の憲和さん。

妹のさや香さんとともにカウンターで接客などを担当しています。

そして今焼きを担当しているのが、次男の智和さんです。
「うちで出しているものはずっと変わりません。最近キムチが増えたくらい」
というように、黄金の定番のメニューがまだあるんです。

昆布と椎茸を利かせただしに鶏脂でコクを出す。これが名物「かしわ鍋」のつゆ。
かしわ鍋は5人前で予約が必要。5人前6,600円。
これに目がない人が多いのです!

「そらち炭鉱(ヤマ)の記憶マネジメントセンター」の職員の方と、芦別、赤平、歌志内の元炭鉱マンの方の情報交換の会にちょっとおじゃましました。
「鍋は炭鉱の味、芦別はガタタン鍋、赤平はガンガン鍋、歌志内はナンコ鍋。みなそれぞれの味がある。この岩見沢の鍋も炭鉱の味。何度も食べたくなるんだよね」
濃いめのつゆに生の鶏モツ、白菜、豆腐、白滝などを豪快に入れて煮立てます。
「ちょっと食べてごらん」
いいんですか?ごちそうになります。
おいしい!モツから出る旨味がクセになる、一度食べたら忘れられない味なのです。
ごちそうさまでした。

子どものころから通っているという常連さん、「しめに忘れちゃいけないもう1品があるのよね。絶対食べてみて」
ちなみに「三船を愛している」というこの方、一人で20本以上をペロリ。豪快!かっこいいです。
「持ち帰って冷凍して、また次に来るまでに大切に食べるの。ここのは北海道1おいしいのよ」
本当に大好きなんですね~。

さて、これがしめの一杯、「かけそば」300円です。
ただのそばじゃありません。
大量にゆがいたモツと鶏ガラのダシを合わせ、鶏脂のコクが効いたかけそばです。
あまった串を入れて食べるのもまたよし。

それにしても焼き鳥本当においしい…まだまだ食べられる。
ビールもぐいぐい進みます。これからは熱燗もいいな。
この塩が特別という噂を聞きますが?
「いえいえ、“秘伝の塩でしょ?”とか言われますけど、ごく普通の自然塩を炒っただけです。父がだいぶいろいろな塩を試して選んだみたいですけどね」

勤続3年、バイトの大学生、鈴木くんが持っているのは塩を炒る専用の中華鍋。
「とうとう穴が開いちゃったので、今日は中止です」
え、いつもそんな大きな鍋で!

ただの塩といいますが、塩ひとつこんなに手をかけるって、なかなかできないことです。
正直ですべてにきちんと手をかけた味が、やっぱり人気のヒミツなのでしょうね。

結局焼いてもらった焼き鳥30本、カメラマンさんとほぼ食べてしまいましたよ。
今度はココ目的で岩見沢にきますね。

三船
岩見沢市一条西7-1
電話 0126-24-1788
営業時間 15:00~21:00(焼き鳥は20:00まで)
定休日 日曜・祝日
※かしわ鍋は5人前と8人前、前日までに要予約
※駐車場なし(近くに有料パーキングあり)

そらち炭鉱(ヤマ)の記憶マネジメントセンター
http://www.mc.soratan.com

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