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我が町のぬくもりステーション vol.4

我が町のぬくもりステーション vol.4「上川エリア」

こちらに掲載されている記事の、ポイント獲得・抽選応募期限は終了しております。

明日の活力を充電 ―我が町のぬくもりステーション―

地域で愛されているカフェ、帰省のたびに訪れたくなる食堂…そう、そこは、住民たちの憩いの場。明日への活力を充電できるオアシスです。笑顔が生まれる、町の「元気の象徴」である店を、月刊誌HO取材陣が、毎月各地域の市町村を訪ねご紹介します。


第四回は、上川地方です。


1軒目 中富良野「Peace Garden パン酵房」

7月の中富良野といえば、やっぱりラベンダー。
その名を一躍全国に広めたのが町内にある「ファーム富田」ですが、町を見下ろす眺めのいい「中富良野町営ラベンダー園」もおすすめです。
観光リフト頂上から望む十勝岳連峰がきれいですね…。

私たちが訪れた日はちょっと肌寒い曇りの日でした。
畑の中にある店を探して車を走らせていると、あらら、道端に子ヤギ。人懐っこく寄ってきます。

子ヤギに誘われるように車から降りてみると、曇りとはいえ、広々とした田園風景に思わず目を奪われました。

それにしても、畑に囲まれたこの道の先に本当に店があるのかな?
…と思っていたところ、ありました。
「Peace Garden パン酵房」です。

4年前の2012年(平成25年)に空家だった築50年以上の農家の住宅を、地元の大工さんに協力してもらいながら、自分たちの手でコツコツと解体し再生させたかわいい古民家。 晴れると十勝岳と芦別岳を望むことができる雄大な景色の中で、パン屋とカフェ、ヒーリングサロンを開いています。

右からカフェとサロンを担当する代表の木脇由希子さん、パン担当の鈴木さやかさんの2人。薪割り用のオノがワイルドです!旭川出身の木脇さんは「東京で飲食店の仕事を経て、札幌や東京で約10年間ヒーリング講師の仕事をしていました。お客さんに誘われた縁で、思い切ってこの町に住んで良かった。仕事をするのが嫌になるほどのんびりできます」とニコニコ。
以前はもうひとりの仲間がいましたが、寿退職をしてお子さん連れで今でもよく遊びにくるそう。「ここ、幸せになれる場所って言われてます」と満ち足りた笑顔の2人が言うと、説得力があります。

店内に加えハーブや野菜を育てる畑、庭なども未だ手入れを進行中。

今年からパンコーナーとカフェコーナーを二つに分けました。青い扉はパンコーナー、赤い扉がカフェコーナーの入り口。

「近くにおいしいパン屋さんがあってうれしいです」と、パンを買いにやってきた女の子とお母さん。
ご近所の農家さんで、ときどき買いにくるそうです。

上富良野産のハルユタカ小麦と自家製の天然酵母で焼き上げる香りよいパンは、約13種類ほど。野菜の自然な色がキュートなカラフルベーグルやチョコたっぷりのナッツチョコ、シナモンロールもおいしそう!

ハード系のカンパーニュやリュスティック、美瑛産のライ麦を使用したライ麦パンなど、小麦本来の味わいが楽しめる、素朴なパンもおすすめです。

おいしさの秘訣は鈴木さんが大切に育てる「酵母ちゃん」
シュワシュワ元気に泡立つ干しブドウの酵母はとてもいい香り。
味見させてもらうと、シードルやワインのようにフルーティなおいしさです。
このほかにも庭のラズベリーや玄米など、数種類の天然酵母を季節によって使い分けるそう。

そんな自家製酵母から生まれる、香りよくもっちりとしたパンを、鈴木さんや木脇さんは「おパン」と呼んでいます。まるで酵母と対話するかのよう作る「おパン」のおいしい癒しにはファンも多いのです。
ふっくらとした生地で包むのは、新作のおから焼きカレーパン。季節ごとの新作も楽しみのひとつ。「酵母ちゃんとの付き合い方も伝授します」というパン教室も人気です。

自家栽培や地元の野菜をふんだんに取り入れた、ランチの担当は木脇さん。カリッと揚げたナスのピカタやキュウリとヨーグルトのニンニク風味サラダなど。スパイスを効かせ、各国の料理のエッセンスを取り入れたサラダや野菜料理は新鮮な感覚のおいしさです。

「パンもファンですが、ここのランチは野菜だけでこんなに満足できるんだと驚くお料理で、勉強になります」と、思わず笑顔になる地元のお客さん。

食事パンと、自家製ヨーグルト、お好みのドリンク付きで1,260円。
この日はソーセージ入りミネストローネがメイン。ローストしたパン粉をまとったブロッコリーはフライのよう。こんな食べ方もあるのですね。

さて、人影が去ったカフェスペースに現れたのは、木脇さんたちの愛犬、イングリッシュセッターの女の子、アメリ。

おすまし美人さんかと思ったら…

外に出るとこの通り!
アメリはもと放棄犬で、福島県から縁あってPeace Gardenにやってきました。
ワンちゃんも幸せになれる場所だったんですね。

「ここは朝の時間がとてもきれいな場所なので、たくさんの人と分かち合いたくて今年からモーニングもはじめました。焼きたてパンを食べに、気軽に寄ってくださいね。眺めがよい窓際のカウンター席も作りましたので」

今ではすっかり中富良野に溶け込んで、とても健やかで楽しそうな2人と一匹に、また会いたいな。

Peace Garden パン酵房
空知郡中富良野町東7線北9号
電話 0167-44-4228
営業時間 7:30~15:00、ディナーは要予約(11月以降の営業時間は未定)
定休日 月~水曜 ※予約制のパン教室は水・日曜
http://peacegarden.jp/

ラベンダー写真提供:なかふらの観光協会


2軒目 富良野「カフェハウスNavo」

やってきました、北海道のおへそ。

はい、そうです夏の名物「北海へそまつり」が名物。
ここは富良野の市街地です。

独特のオーラを放つカフェを見つけました。「カフェハウスNavo」
扉を開ける前から心魅かれる、カラフルなフラッグやロゴのペイント、足もとの凝った石組み、流木のディスプレイ。一体どんなお店なんでしょうかね。

迎えてくれたのは、とってもビッグな店主、竹内貴康さん。187㎝もあるんですって!伝統の富良野高校ラグビー部出身で、社会人チームも経験した元ラガーマン。ラフティングにはまって、海外に武者修行にも出かけたけれど「海外の自然を見たとき、子どもの頃から遊んでいた、地元の自然はやっぱり素晴らしいと気が付きました」と富良野に戻ってきたそう。

カフェの母体はアウトドア体験の会社で、竹内さんはお客さんのさまざまな要望に合わせて、ラフティングや、体ひとつで川下りを楽しむ、キャニオニングなどを近隣で案内しています。そんな竹内さんたちが、ツアーのお客さんや地元の人たちも楽しめるカフェを始めたのが2年前のこと。

全て仲間たちと手作りをしたという空間は、とにかく凝っているので探検したくなります。
「自然素材を使いたかったので、川から山からいろいろ集めてきました。粘土の壁や照明も、地元の仲間やクリエイターの友達と一緒に、半年かけて手作りしたんですよ」

竹内さんにそっくりという、同じく富良野在住のお姉さんも、随所に色々なデザインを施し、焼キゴテで柱にイラストや模様を入れたり、ペイントをしたり、この空間の雰囲気作りで活躍していたそうです。
お姉さん、会ってみたいな!

ナチュラルな玉のれん(?)と思ったら、クルミとドングリの帽子。鮮やかなカラーの木を組んだベンチがすてきです。

天井を見上げるとライトも個性的。鳥の羽に植物のツルや枝で巣のように見えます。

シーグラスが輝く白い壁に、かわいい階段。
これは昇るしかないでしょう!

屋根裏のカウンターに流木の座椅子がナチュラルです。
席を予約するお客さんもいるそうですが、わかるなー。
お気に入りの場所を見つけたくなるもの。

家族連れに人気の小上がりは、なんと滑り台などがあり、子どもたちの絶好の遊び場です。
「子どもたちが夢中になって遊ぶから、オトナもゆっくりできると評判なんですよ」
子どもしか入れないスペースからだけ、キッチンをのぞき見できるようになっているそうです。面白いですね。不要になった木のおもちゃもお客さんに持ってきてもらい、子どもたちが自由に遊んで持ち帰るようにもしているそう。さすが竹内さんも2人のお子さんのパパ。大人も子どもも楽しめる空間を作ったんですね。
メニューに安全安心な離乳食など、キッズメニューもあるんです!

ランチやカフェを担当するのは竹内さんの奥さん、薫さん。料理はベジタリアンやビーガンの人も食べられる、肉や乳製品、卵など動物性の脂肪とタンパク質を使わず、白い砂糖なども一切入らないメニューもあります。富良野産や道内産の食材で作られる、体に優しいものばかりで、Navoのごはんはできています。

「お蕎麦焼き」900円は、肉が入っていないけれど、ゴマ油やスパイスの香りにパンチがあり、かなりのボリューム感がある人気の一品。
減農薬米の黒豆のおにぎりや、ダシが効いた味噌汁もついています。

全て無添加で手作りのデザートも充実しています。「ヘンプナッツケーキ自家製アイスのせ」500円は栄養豊富な麻の実入りのアツアツパンケーキの上に、豆腐とバナナの冷たいアイスがよく合います。ほかにも豆腐のケーキやどら焼きまで。ナチュラルスイーツ、いろいろ食べてみたくなります。

夏のおすすめドリンクは、カラフルなソーダ。ラベンダーやザクロなど、いろいろ選べます。
は~、それにしても、居心地のいい空間で昼のカフェタイム、癒されますね。

竹内さんと、幼馴染みで料理人の石王貴章さんは、主に夜の部担当。2人のハッピーオーラで、楽しい夜を過ごせることは間違いなし!

この日は地元の友だちがごはんに来てくれたそう。ちなみに左にいるのは石王さんの奥さん、絵里奈さんと娘さん。かわいいね。

お好みの辛さにもできる、カレーやタコライス、ベジタリアンおつまみもいろいろありますよ。
富良野に来たら、また寄りまーす!

カフェハウスNavo
富良野市若葉町10−8
電話 0167-56-7993
営業時間 ランチ 11:00~14:00、カフェ 14:00~18:00、ディナー 18:00~翌1:00
定休日 月曜
https://www.navo-net.com

3軒目 愛別「粋人館」

愛別町の中心地に、突然現れるスタイリッシュな渋墨色の建物は、「粋人館」。十割そばと日本料理が味わえる店です。
モダンな設計で知られる京都のデザイナー永田正彦氏によるデザインなのだそう。

2015(平成27)年に完成した道路に面する新築部分の本館と、改装した歴史ある母屋の二つの空間に分かれ、主に一般のお客さんが食事を楽しめるのは本館です。

京都の絵師による見事な鳳凰に迎えられ、2階に上がります。

2階は清潔な白木を基調としたモダンな和風の意匠。ほのかな間接照明や障子で半個室にすることができる空間もあり、ゆっくりとくつろぐことができます。

愛別といえばやっぱりキノコ。「茸天ぷらそば」950円は、マイタケやエノキなどの立派なキノコの天ぷらと、店主自ら育てた愛別産の「キタワセ」のそば粉を使用した、つなぎを使わない十割そばの組み合わせが人気です。そば粉は地元の製粉所のなめらかな石臼挽きで。オーダーを受けてから製麺するので、そば本来の香りや味わいが存分に楽しめます。
しっかりとした昆布とカツオの風味が生きた、甘めでまろやかな京風のそばつゆに、「どっぷりとそばを浸して食べてください」と勧められるのもうれしいですね。
旭川在住の陶芸作家、工藤和彦さんの器もすてきです。

これは何かわかりますか?なんと、ナメコの天ぷら。初めて食べましたが、おかわりしたくなりますよ。

ランチの「粋人館御膳」2,000円は、愛別産無農薬玄米「ゆめぴりか」が入ったもちもちの「開運 稲荷寿司」をはじめ、かわいい豆皿や小鉢でそばや季節の惣菜、デザートまで楽しめ人気です。

ちなみに使用されているのは、こだわりの器ばかり。江戸から明治にかけて使用されていた、貴重な100年以上前の骨董品ですので、器もじっくり眺めて楽しめます。

「いつも気になっていて、今日ようやく来ることができました」と嬉しそうなお父さん。女の子も「ごはんがとってもおいしい」とにっこり。楽しそうな食事の時間に、おじゃましました。どうぞごゆっくり。

そんな親子を笑顔で見守っていたのが、地元・愛別町長も務めた、オーナーの矢部福二郎さんです。
接客はもちろん、夏はそば農家としても忙しい毎日を送っています。

「以前の持ち主の方を訪ね、ここに初めて来たのは、ちょうど5年前の6月初旬のことでしたね。取り壊して更地にする予定だと聞いていましたが、この建物と見事な庭に衝撃を受けました。貴重な町の宝として残したいと思いましてね」
矢部さんはすぐに東京・銀座、京都・祇園で、飲食店や器のギャラリーを営む息子の慎太郎さんを愛別に呼び、一緒にこの建物を見てもらったそう。
「“お父さん、これは絶対に無くしてはいけない”という慎太郎の言葉に後押しされて、2013(平成25)年に会社を設立して90年の歴史ある旧上西邸の母屋と日本庭園を譲り受けました」

会席料理を予約したときのみ利用できる母屋は、1922(大正11)年に本州から大工を呼び寄せて建てられた趣ある日本家屋。

1階の和室は、鮮やかな青を効かせ落ち着いた空間。

朱色を効かせた2階では、富山の古民家から移設した細工が美しい欄間が映えます。

母屋洋間は、かつて雑貨商・味噌麹製造業で財を成した上西弥助氏が、商談を行った場所。家屋が建てられた大正時代と同じ時代の、フランスのアンティーク家具が見事に調和しています。今は珉平焼(みんぺいやき)のギャラリーコーナーとして利用。

さて、美しい庭園で、料理のために季節のあしらいを摘んでいるのは、料理長の塩谷直也さんです。

京都の和食店を中心に経験を積んできた塩谷さんは、地元や近隣の食材を存分に生かしつつも、丁寧な仕事をほどこした繊細な料理を生みだします。

さっそく、6,500円の会席コースをいただいてみます。前菜は上川で養殖されているニジマスのマリネにキャンベルのソースを合わせたものや、サワラのけんちん焼き、新鮮だからこそ叶う、あっさりとしたカスベの煮つけなど。
椀物は炙った穂付きタケノコと、ほろほろと軟らかな豚の角煮です。
何よりも驚いたのは北海道ではあまり味わったことのない、手をかけたお造り。ヒラメの昆布じめ、マグロ中トロの炙りは、とろりと濃厚。ホタテの炙りは香ばしさとともに、手でちぎりサクサクとした食感が残り新鮮な味わいが楽しめます。

母屋で味わう、特別な会席料理につい夢中になるけれど、ふと目に入る庭園の眺めもまたごちそう。
まるで時空を超えて、この屋敷が建てられた時代に迷い込んだような、懐かしくも不思議な気分になりました。

粋人館
上川郡愛別町本町174
電話 01658-6-5077
営業時間 11:30~14:00、17:00~21:00
※会席料理の予約は前日まで
定休日 水曜
http://suijinkan.me/greeting

4軒目 名寄「三星食堂」

名寄市に入ると道路沿いに水田が続き、広々とした田園風景が広がります。これは…もち米なんですよね。

その名も「もち米の里なよろ」道の駅にちょっと寄り道してみます。

まだ午前中の早い時間ですが、すでにレジには行列ができていました。
人気なんですね。この道の駅の目玉は、なんといっても、軟らかくてのびがいい、ソフト大福。ブドウにメロン、バターコーンなどなど全17種類もあるんですよ!

やっぱりスタンダードな豆大福がいいな…と言ってもこれから私たちが目指すのは食堂。ぐっとがまんして大福はおみやげにします。

訪れたのは名寄の駅前。なんと100年も続く「三星食堂」です。日曜日の昼どき、すでに駐車場には車がギッシリ停まっていました。

入り口には大きなカエルの置物。かわいい座布団に座っています。
きみがいるから、お客さんはみんなここにカエルのかな?

大きな窓からは名寄駅がよく見えます。
列車の時間まで、ここで食事をしたりコーヒーを飲んだりして休む人も多いのです。
あ、メニューに「列車の時間でお急ぎの方はお申し出下さい」って書いてあります。

厨房の中は、すでに戦争?かと思いきや、あれれ、太陽みたいな余裕の笑顔ですね。

現在は13年前に帰ってきた4代目の武田宏三さんが店主となり、3代目の泰三さん・るみ子さん夫妻と一緒に店を切り盛りしています。自然にるみ子さんの肩に手をまわす泰三さん、すてきです!

家族で営む食堂は、創業は1914(大正3)年とされているけれど、もう少し前という説もあるそうです。地元の人たちに長年愛され100年以上続く、本当の老舗食堂です。

滋賀県出身の初代が北海道に渡り、旭川(現・東川町)に入植したのは1902(明治35)年頃。けれど農作業が身に合わず、天塩川を舟で渡り、名寄へ移住したそうです。はじめは運送業で生計を立てていましたが、やがて食堂経営を始めました。

明治から大正にかけての頃、創業当時と言われる写真です。「御待合所」と書かれた大きな看板に、「和洋食」「寿し」などの文字が見えますね。

これは1914(大正3)年頃の写真。看板や暖簾には三星食堂、立て看板には「肉鍋ごはん」「なべやき」の文字が見えます。バンビの看板が見えるとなりの中折れ屋根の建物は、親戚が営む駄菓子屋だったのだそう。

1995(平成7)年頃。昭和に建てられた、現在の店に建て替えられる前の姿です。
ちなみに、独身時代のるみ子さんは食堂の隣にある会社に勤めていて、その時、出前に来ていた泰三さんと出会ったのですって。

はい、当時の2人です。映画スターみたいですね!

泰三さんは、ほっとする味わいで人気のラーメンや、開店当初から続く、そば・うどんなど麺類を担当しています。「手作りの味が基本ですから」そばのだしに使うかつお節は、毎朝地下にある機械で削っているそうです。

店の伝統を守りつつ、札幌のホテルなどで腕を磨いてきた宏三さんが作り出す、多彩なメニューも食堂の中心です。

一番のヒットメニューがこちら。この日は次から次へとオーダーが絶えませんでした。

ボリューム満点の、「鶏の照焼特製マヨネーズ炒定食」850円(単品650円)。ソースはこってり濃厚で鶏肉はさっぱり軟らか。ごはんがすすむ、絶妙な味なのです。双璧を成す人気メニュー「鶏の甘酢風味定食」もありますよ。

こちらのグループは女性が甘酢、男性陣は照焼マヨ。「これが食べたくて来たんです」と、みんなごはんを大盛りで、気持ちいいほどに、もりもり食べていました。

自家製のそばつゆベースの「カツ丼」850円もだしの香りがたまりません。ラーメンと合わせて食べている人、結構いましたよ。

「手間を惜しまず普通の料理を普通に作るということが大切だと思っています。これからもこの普通を守っていきたいと思いますね」と宏三さん。
丁寧な下ごしらえに時間をかけ、安くて良心的な値段でおいしいものを出してくれます。
普通を守るって、実は大変なのですね。
「うちは息子が3人いるんだけど、私たちが育てた割には、みんないい仕上がりになったのよね!」とるみ子さんも自慢の息子さんです。

そんな家族の背中を見てきたからか、宏三さんの小学生の息子さんも、すでに「店を継ぎたい」と言っているそう。

100年、200年。三星食堂はずっと続いてほしいですね。

三星食堂
名寄市大通南6丁目
電話 01654-2-3535
営業時間 10:00~20:00(14:30~17:00は中休み)
定休日 月曜(日曜の夜は不定休)

5軒目 下川「駅カフェ イチノハシ」

訪れた日はあいにくの雨でしたが、霧雨の森からは、すがすがしい森の香りが漂っていました。私たちが訪れたのは、町の約9割が森林という下川町です。

中心街からさらに車で15分ほど、ほとんど民家のない道を進むと、2015(平成25)年に誕生した町営集合住宅「一の橋バイオビレッジ」がありました。
もともとの住民と移住者、老若男女が暮らし、互いに行き来しやすい長屋風の住宅が人気で、現在28戸が満室なのだそう。林業で栄えた一の橋にも、かつては鉄道が走り、1950年代の人口は2,000人を超えていたそうです。けれど林業の衰退とともに減少し、現在は100人ほど。鉄道も廃線になりました。当時の駅の面影は国道沿いに残る駅名標だけ。駅舎はバイオビレッジに建て替わり、今では旅人や地元の人々が気軽に食事を楽しみ、語り合える地域唯一のカフェ兼売店「駅カフェ イチノハシ」となりました。

運営するのは「NPO法人 地域おこし協力隊」。一の橋地域の支援活動の一環としてカフェを営んでいます。出迎えてくれたのは、カフェスタッフとして移住3年目となる千葉県出身の増田万知恵さん(左から2番目)。和食ランチやデザート作り、接客も担当しています。「母の介護を終え、何か好きなことを始めようと思っていた時に、東京の移住案内会で下川町を知り、すぐに移住しました」
「自然に囲まれ静かな暮らしをしてみたかった」と、同期で神奈川県から移り住んだ料理人・宮内重幸さん(右端)は、地域の素材にこだわった本格イタリアンが評判で、地元はもちろん近隣のお客さんからも喜ばれています。

宮内さんはインドネシア生まれでイギリスをはじめ海外経験も長く、料理人になる前はテキスタイルデザイナーだったという珍しい経歴の持ち主。料理に加え地元素材のおみやげ開発などにセンスの良さが生かされています。

間もなく発売予定のおみやげです。トマトの青い実やニジマスのピクルス、ヤマメのコンフィのほか、地元の卵の濃厚なレモンカードなど、一味違ったラインナップがおしゃれですね。

実は来年、先輩2人はカフェを卒業します。今年から札幌出身の大石悠二さんと神奈川出身の柏木素直さんが、ここで料理を学びながら地域に慣れ、カフェを引き継ぐ準備をしています。増田さんと宮内さんは新たな店のスタイルを模索する、後輩たちを支えています。

カフェの横に、1台のかわいいトラックが停まりました。
降りてきた女性は昨年から地域おこし協力隊となった、東京出身の田中由紀子さん。

食材や生活用品を町の商店から仕入れて、トラックで町内の高齢者福祉施設まで運ぶ買い物支援担当者です。ちなみにトラックの緑色は地元の人からの公募で決まった下川を表す「下川グリーン」なんですって。

「おいしいものが食べられるのでよくここに来ます」食事中におじゃまして話を聞くと、田中さんは山菜の栽培にもチャレンジしていて、森からトゲの少ないタラの木を探し、畑で育てているそうです。田中さんが育てたタラの芽、いつか食べてみたいな。

おいしそうにトンカツを頬張るのは、武田大さん。一の橋の住人となって7年のベテラン(?)移住者で「NPO法人 地域おこし協力隊」の代表です。お年寄りのための冬の雪かきから電球替えまで、地域の困りごとに何でも対応しています。

町内の木材を使った温もりある店内では、同じ地域おこし協力隊同士お互いの近況を語り合うこともしばしば。
こんなゆったりとした雨の日に、仲間と過ごすのもいいですね。

私たちも増田さんが作った、優しい味わいの「鯖味噌定食」900円をいただきました。ランチはパスタのほか焼き魚や餃子など定食が8種類ほど。食べると募金できるチャリティーメニューもユニーク。

さて、この夜は地元の人も大切な日に予約するという宮内さんたちが腕を振るうイタリアンのディナーをいただきに再訪問しました。

コースは2人からの予約制。この日のメインはアサリの旨味が効いたソイのアクアパッツア。ほか前菜や下川産小麦ハルユタカのピザ、パスタ、デザートもついた一人前3,500円のコースの一例です。柏木さん作のオリーブパンもおいしかった。

桜の塩漬けがほんのり香る、とてもきれいなサクラマスとオリーブのパスタ。たまりませんでした!

下川産ホワイトアスパラと酵素卵のビスマルクは、実はサービスの1皿。旬野菜の入荷がある日は、こんな風にうれしいおまけがあることも。

充実の下川イタリアンごちそうまでした。
宮内さんはカフェを卒業後に下川町で店を出す予定なのだそう。今後も楽しみですね。

そして一の橋の人々を繋ぐ大切なこのカフェを、大石さんと柏木さん、これからもどうぞ盛り上げていってくださいね。

さて、翌日は桜ヶ丘公園のセンターハウス「フレペ」に寄りました。目的は下川産のおみやげです。

トドマツ精油をベースとしたアロマアイテムが人気の「フプの森」の製品や、一の橋に工房がある、ハンドメイドのオーガニックハーブ化粧品「ソーリー工房」の製品が充実しています。

常駐するメディカルハーブコーディネーターの山地歩さんにおすすめを聞きながら、お気に入りを見つけたいですね。

駅カフェ イチノハシ
上川郡下川町一の橋603-2
電話 01655-6-7878
営業時間 ランチ 11:30〜14:00(L.O.13:30)、
カフェ 15:00~17:00(L.O.16:30)、
ディナー 18:00~21:00(L.O.20:00)
※ディナーは2日前まで予約制
定休日 火・水曜・祝日
※土・日曜はイベントに出店の場合もあるので要問い合わせ

※コラムに記載のメニュー料金はすべて税込価格です。

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