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我が町のぬくもりステーション Vol.3

我が町のぬくもりステーション Vol.3「釧路・根室地方」

こちらに掲載されている記事の、ポイント獲得・抽選応募期限は終了しております。

明日の活力を充電 ―我が町のぬくもりステーション―

地域で愛されているカフェ、帰省のたびに訪れたくなる食堂…そう、そこは、住民たちの憩いの場。明日への活力を充電できるオアシスです。笑顔が生まれる、町の「元気の象徴」である店を、月刊誌HO取材陣が、毎月各地域の市町村を訪ねご紹介します。


第三回は道東、釧路・根室地方です。


1軒目 根室「食事と喫茶 どりあん」

根室市街地への入り口、国道44号沿いにある「スワン44ねむろ」は眺めが素晴らしい道の駅。
全面ガラス張りの中からも、風蓮湖や春国岱(しゅんくにたい)が一望できます。
春国岱は根室湾と風蓮湖の間にある長さ8km、幅1.3kmの砂州。2005年11月、世界的にも重要な湿地として、ラムサール条約に登録されました。ハマナスの大群落やアカエゾマツの原生林などが広がり、これまでタンチョウやオジロワシなど約310種類の野鳥が確認されたバードサンクチュアリ。全国の野鳥ファンにとっては憧れの地です。6月中旬からはショウドウツバメやアマツバメが飛び交うそうですよ。道の駅では無料で双眼鏡の貸し出しも行っています。

野鳥に関するおみやげもいろいろありました。

さて、根室の市街地が近づいてくると…やっぱり花咲ガニ。 根室の花咲ガニ漁は7月から9月なので旬はこれから。 今日はもうひとつの根室名物のお店に向かいます。

根室市街の中心地にある「どりあん」。根室のご当地グルメ「エスカロップ」が食べられる店は10カ所ほどありますが、この店は今はなき発祥の店「モンブラン」の味を引き継ぐ正統派。

ちょうどお昼、扉を開けるとすでにほぼ満席。
しかも、みんなエスカロップを頼んでますね。

仕事で釧路に来た男性は、地元の人に連れて来てもらったそう。「前から食べてみたかったんです。やっぱり来てよかった、おいしいですね」と、この笑顔!

タケノコが入ったバターライスに、カリっと揚げたてでジューシーな阿寒ポークのトンカツ。
そこにコクのあるデミグラスソースがかかっています。

根室の人にとってエスカロップは、スパゲティやカレーライスなどと同じように、ごくフツーの洋食。市内の喫茶店や食堂には、たいていある定番料理で、ほかの地域にも「エスカロップ」があると信じて疑わない根室市民もいるそうな…。

1958年に、別海の網元だった創始者が開いた喫茶店「モンブラン」。1963年に横浜のイタリア料理店から迎えたシェフが、当時、東京・新橋の洋食屋で出していた「エスカロッピーニ」というメニューを根室に持ち込んだと言われています。
もともと「エスカロープ」とはフランス語で肉や魚の薄切りのこと。
「東京では牛肉を使い、ライスにはマッシュルームが入っていたようですが、当時の根室で手に入るはずもなく、代用で豚肉やタケノコを使うようになったと言われています。そんな話を、この店に戻ったころは全く知らなくて。ずいぶん歴史を勉強しました」と笑うのは店長の小滝祥平さん。店を継ぐために根室に戻ってきて、かれこれ25年になるそうです。

小滝さんの父・文吾さんは、「モンブラン」から独立した店主が営んでいた「ニューモンブラン」で料理人をしていました。
文吾さんが自分の喫茶店「どりあん」を開いたのは1969年。
「どりあん」「ニューモンブラン」とともに、エスカロップを広く根室の人々に広めました。

「店の生命線です」というデミグラスソースは、小滝さんが1週間以上かけて作る手作り。牛骨と香味野菜を1週間煮出し、そこに牛脂と小麦粉を1時間以上炒めたルーを入れて漉します。そこにさらに焼いた牛肉を入れて7時間以上煮込み完成します。
「大変だけど手作りじゃないと味が変わってしまうから、既製品は使いません」
このソースを使ったハンバーグやビーフシチューも評判です。

ソース作りで酷使する手のひらには、レードルやヘラで出来たタコがくっきり。
手を掛けるとは、まさにこのこと。おいしいはずですね。

さて、出来立てのソースはエスカロップに使いますが、実はもう1種類、開店から継ぎ足してきた濃厚なデミグラスソースを使う料理があります。

オリエンタルライス980円は、シイタケが入った軽めのドライカレーに、牛ハラミを載せています。
つややかで濃厚なもう1種類の濃厚デミグラスソースをかけたら完成。
これも「モンブラン」の味だったそう。エスカロップに比べ、味が複雑で再現しにくいせいか、他店に広がらなかったそうです。

「エスカロップ」「オリエンタルライス」は2006年に小滝さんによって商標登録されました。「市外などで使われないように登録しました。エスカロップは地元で自由に使ってもらっています。この味をきっかけに、もっとたくさんの人に根室に遊びに来て欲しいですからね」

さて、「どりあん」は観光客に人気ですが、地元の人にも親しまれる喫茶店。
何十年も通っているという寿司屋の大将はコーヒーブレイク中。
お母さんと小さな女の子も食事にやってきました。
ん?女の子のお子さまランチ、ずいぶん豪華じゃないですか。
見せて見せて~

ちょっと困り顔のおにぎりが、いい味出してます。
その名も「ちびっこ天国」900円。
果物がいっぱいで、プリンがまたおいしいそう。うらやましいな。

オトナにはこちらを。小滝さんの奥さん、設子さんが作ってくれたのは懐かしのプリンアラモード700円。果物の飾り切りが凝ってます。
ちょっと固めの、昔ながらのカスタードプリンがおいしかった!
ほかにチョコレートやバナナパフェなども人気なのだそう。

春国岱とエスカロップ、それに今度はパフェを目当てに…また根室に遊びに来ますね!

食事と喫茶 どりあん
根室市常盤町2丁目9
電話 0153-24-3403
営業時間 8:00~21:00(L.O. 20:45)
定休日 火曜
(祝日の場合は営業。GW・盆時期・年末年始は営業)

2軒目 弟子屈町「森のホール」

やってきました弟子屈町。町の半分以上が摩周湖と屈斜路湖がある阿寒国立公園で、貴重な自然の姿を残しています。まずはクッシー街道から屈斜路湖に向かいました。

ハイ、いましたクッシー。
クッシーは、屈斜路湖の未確認生物。
日本最大のカルデラ湖である大きくて神秘的な湖を見つめていると、本当にクッシーがのっそりと巨体を現しそう。

屈斜路湖はカヌーイスト憧れの川、釧路湿原を通り太平洋に注ぐ釧路川の源流で、多くのカヌーツアーの出発点になっています。そして、冬はオオハクチョウが飛来し藻琴山の眺めも美しいロケーションが、世界中のカメラマンを魅了しているそうです。…それでハクチョウボートがいっぱいあるのかしらね。

この湖畔にある砂湯は、名前の通り砂を掘るとお湯が出る面白い温泉地。
北見からやってきたお父さんと男の子は、砂湯に来ることを、とても楽しみにしていたんだって。
新品のスコップ持参で、2人で一生懸命掘った足湯に満足そう。
「お湯は熱めで湖の冷たい水と混じってちょうどいい湯加減です」とお父さん。
いいな、気持ちよさそう。

さて、そろそろ本日のお目あてのカフェに向かいましょう。
ここから10分ほど車を走らせます。

赤い屋根の木造駅舎がレトロな、川湯温泉駅のすぐ近く。
「森のホール」がありました。
昭和初期の建物に手を入れた、温かな雰囲気の木の建物。緑の屋根が目印です。
ただ今午前11時ですが、何やらすでににぎやかな気配。

扉を開くと、あらら、ものすごい熱気。
入り口でお菓子を販売するコーナー「スウィート・ドゥ・バラック」には行列ができていました。
今日は日曜日。評判の味を聞きつけてたくさんの人たちが近隣からやってきています。
町内在住の女性客も「今日は特に人が多いですね、ケーキまだあるかなぁ」と驚いていました。

普段は定番のプリンやシュークリーム、ロールケーキのほかに季節のケーキも合わせて、約20種類ほどそろっているそうですが、この日は午前中であっという間に完売。
ギリギリセーフで、お昼の後にいただけるようにオーダーできました。

ケーキはなくなりましたが、マドレーヌやサブレなどの焼き菓子はまだあるので、おみやげにできます。
カフェで使用している、美幌の有機栽培農家「しぶ∞(はち)」のみずみずしい野菜、お菓子の味の決め手、標茶の「ポロニ養鶏所」の有精卵、ほかに有機オリーブオイルやパスタソース、ドリンク類も販売していました。カフェコーナーにはウエアや雑貨もあるそうです。

さて、奥のカフェスペース「森カフェ」へ。
時にライブやイベント会場にもなる広々した空間には、木のイスやベンチ、ソファ席などがあり、ゆったりとした雰囲気。
セルフサービスなので、くつろぎ過ぎてオーダーすることをお忘れなく!

忙しい中でも親切な女性スタッフの皆さんに感激してしまいますが、中でもひときわ明るい笑顔が印象的な、店主でパティシエの武山まき子さん。 愛知県出身で、川湯で知人の店を手伝ううちに結婚し、移住を決めたそうです。

「森のホール」という店名には「みんなが集まる場所になれるように」という願いが込められています。今年開店から7年目、その思いは伝わり、観光客はもちろん、地元の常連客も通う場所に育ちました。
お客さんはスタッフの皆さんとの何気ない会話も楽しんでいますよ。

さて、キッチンには焼きたての大きなイングリッシュマフィンが。
ケーキの4号型で焼いているので直径12cmもあります。おいしそう!
このサンドイッチをオーダーしました。
調理するのは、食事作りの要であるシホさん。千葉県出身で、武山さんにとっては移住やカフェ経営の大先輩。武山さん曰く「頼りきっている存在です(笑)」

「イングリッシュマフィンサンド」は864円。フカフカのマフィンに、地元の猪狩農場の甘みがある越冬キタアカリの揚げたてコロッケをサンド。野菜も豊富でかなりのボリューム。

ほかにも日替わりの定食「森ごはん」やピザなどもあり充実の食事メニュー。どれも手作りで栄養バランスが考えられていて、安全な食材や地域の野菜をたっぷりと組み合わせています。

隣町から来たという女性グループが、おいしそうに食べているのは日替わりの「森どんぶり」
サラダみたいなピザもおいしそう!

さて、お楽しみのケーキ。
「バナナとリンゴの焼きタルト」486円は、キャラメリゼしたクルミやレーズンも贅沢に入ってリッチな味わいがたまりません。

「マスカルポーネ」345円は、甘酸っぱいベリーをアクセントに、マスカルポーネチーズとサワークリームを合わせた、ふんわり爽やかなクリームがたっぷり。
…これは、何度も食べたくなります。

2011年にこの店ができるまで、武山さんは駅の反対側にあった鉄道員宿舎を改装した小さなケーキ屋兼カフェを2005年から開いていました。お菓子のコーナー「スウィート・ドゥ・バラック」はその時の店名。店を始めたころの思いは今も変わらず、道産の小麦粉や卵、バターや生クリームのみを使用し、素材のおいしさを生かした喜ばれるケーキを作り続けています。

おいしいものはもちろんですが、朗らかな女性スタッフの皆さんとともに、たくさんの人がくつろげる、居心地のいい空間も作っているのですね。
人々が集うかけがえのない場所となった「森のホール」で、エネルギーチャージさせてもらいました!

森のホール
川上郡弟子屈町川湯駅前2丁目1-2
電話 015-483-2906
営業時間 9:30~18:00、11月~3月は17:00まで
※食事は11:00~16:00
定休日 火曜・第2・4月曜

3軒目 鶴居村「ファームレストラン ハートンツリー」

鶴居村にやってきました。「日本で最も美しい村」連合に加盟する、酪農を中心とした人口約2,500人の農村です。
手つかずの自然豊かな釧路湿原国立公園があり、多くのタンチョウが暮らしています。
村では絶滅したと思われたタンチョウが1924年に再発見され、長年給餌を行い手厚く保護を続けてきました。給餌を行う冬は、タンチョウの姿を求め多くの観光客やカメラマンでにぎわいます。

いました。ちょっと遠くですが、緑の中に映える白くほっそりとした姿が神々しい。
ヒナがかえる繁殖シーズンのこの季節は、ほとんどの時間を湿原で過ごすタンチョウですが、ときどきこうやって出会えることがあります。

私たちが向かったのは小高い丘の上にある、赤い屋根の小さな家。
はるか向こうに見つけたのが「ファームレストラン ハートンツリー」です。

国道から畑や牧草地へと進むと、要所要所にある小さな看板に導かれてたどり着きました。

360度の大パノラマが広がる風景の中に、ハーブガーデンに囲まれた小さなレストランが、溶け込むように佇んでいました。
チーズ工房や体験工房、ゲストハウスがあり、牧歌的な風景の中でおいしい地元食材の食事を楽しみながら、長期滞在もできます。

犬のクーピーやヤギのみかん、仲間になったばかりの人懐こい子ヤギ。
一緒に暮らす、動物たちものびのびと過ごしていました。

迎えてくれたのはオーナーシェフの服部佐知子さん。釧路管内出身で、大阪の調理師専門学校でヨーロッパ料理とパンや製菓を学び、そのまま大阪で結婚しました。けれど都会暮らしの中であらためて田舎の良さを痛感し、同じ思いの夫・政人さんとともに北海道に戻りました。
しばらくは政人さんとともに酪農ヘルパーをしながら暮らしていましたが、偶然見つけたこの場所に運命を感じ、自宅を建てレストランを開いて19年。
来年はいよいよ20周年を迎えます。
「ここから見る朝焼けと夕焼けが大好き。たくさんの人に眺めてもらって、ここでゆっくり過ごして欲しいですね」

ハーブの専門家でもある服部さんは道東を中心に、地元食材の料理教室やハーブを生かす暮らしを提案する講座や公演を数々行っています。
カモミールやレモンバームなど約100種類ものハーブガーデンは、8名の地元女性スタッフとともに育て、レストランのメニューやハーブソルトなど商品開発にも生かされています。
「もともとはレストランの料理教室に集まったお母さんたちでしたが、子どもを連れてきたり、時間もそれぞれ自由に働いてもらえるようにしてきました」

レストランの厨房では、パンの仕込みをする娘の萌々子さん。チーズを作るときにできる乳清(ホエー)を使い、ソフトとハードの2種類を作っています。
焼きたてがおいしそう!

2013年から始めたチーズ工房では、ナチュラルチーズと白カビタイプを、地元・菱沼ファームのおいしい牛乳で作っています。
「幸せな牛乳って呼んでいるのですが、ここでの料理には必ず使用して、コーヒーにも付けています」。薦められてそのまま口に含むと、とても甘くて驚いてしまいました。
牛乳ってこんな味だったんだ。
ここは本物の味に出会える場所なのです。

国際的な農業体験と交流を図る「ウーフ ジャパン」のホストにも長年登録してる服部さんのもと、これまで約600名もの各国の“子どもたち”がやってきました。この日もスペイン、香港、アメリカからのゲストがレストランを手伝っていました。国際的ですね。

開店から間もなく、お客さんは次々に店を訪れ、大きな窓からの眺めに感激しています。
「ずっと来てみたかった」というお母さん2人と楽しそうにおしゃべりする服部さん。
お子さん連れのママたち、大歓迎なんですよ。

私たちがいただいたのは、ガーデンランチ2,100円。
すてきな盛り付けに、思わず「かわいい」と声を上げてしまいました。
「ビーツのピンク、ハーブのグリーンやオレンジ。3色を必ず入れるんです」と、彩りの秘密を教えてくださいました。

地元の素材にこだわった料理は、フレッシュなサラダやふんわりとした鮭と鶴居豆腐のテリーヌ、コクのあるコッコロ卵のキッシュ、キャベツの色がきれいな手打ちパスタなど盛りだくさん。デザートのチーズケーキとハーブティーまで、うっとりとした気分で味わえました。

「全て手作りなので、お待たせしてしまうこともあります。ごめんなさいね」
いえいえ、待つ間に眺める風景もごちそうですから!

おみやげに買うこともできるバラやササ、カレンデュラの3色のハーブソルト。オリーブオイルと一緒にパンにつけると最高でした。
地元の子どもたちと商品開発した、町のキャラ「つるぼークッキー」もぜひ!
野菜で自然な色をつけています。

気が付けば、時間を忘れて過ごしていました。
名残り惜しいけど、今度は花盛りのガーデンと夕陽を見にこようかな。

帰り道、この春リニューアルオープンしたばかりの「温根内ビジターセンター」に寄ってみました。館内では釧路湿原の情報が展示され、年間を通して観察会などさまざまなプログラムが行われています。
全長3.1km、約1時間半の木道コースは、散歩しながら観察できますよ。

あ、折り鶴がかわいい。ボランティアの方が持ってきてくれたそうです。

この日は清掃活動をするために近隣から集まった、パークボランティアの皆さんでにぎやかでした。釧路湿原は地元の人にも守られているのですね。

湿原の象徴ヤチボウズ。頭のてっぺんに、モヒカンのようにぐんぐん青い葉を伸ばしているね。
夏はこの木道沿いにホタルが見られることもあるそうです。
今度この村に来るなら、丘の上のコテージに泊まって、もっとゆっくりと過ごしてみたくなりました。

ファームレストラン ハートンツリー
阿寒郡鶴居村雪裡496−4
電話 0154-64-2542
営業時間 10:00~17:00 ※17:00以降は要予約
定休日 木曜日(8月は無休)

4軒目 標茶「そば処 あさひや」

「標茶のお薦めスポット?そうですね~。なんもないから、多和平(たわだいら)は360度ぐるりと地平線を見渡せますよ」。ほほー、そんなところがあるのですか!
取材依頼の電話で、そんな話を「そば処 あさひや」の柴田充さんからお聞きして、お店を訪ねる前に、まずは多和平展望台に寄り道しましょう。

車でなだらかな牧草地を抜けて丘を登って行くと、広い駐車場にたどり着きました。
お、カラフルなトラクターがいい感じ。キャンプ場やレストハウスもあるのですね。
ここは「標茶町育成牧場」の中にあり、総面積は2,128haの日本一広い牧場。
夏季はたくさんの乳牛や羊が放牧されるのですが、まだちょっと早かったみたい

駐車場から歩いて5分ほどのところに、展望台がありました。

確かに何もないけど、すごい。道東らしい雄大な眺め。
北には摩周岳や西別岳、斜里岳が、西には阿寒の山々が見えました。
いいところですね標茶。広い!ここだけでしか見られない景色に出会えてよかった。
満足したところで、町中へと向かいましょう。

国道391号線からJR標茶駅前へ向かう途中。
開運橋のたもとに「そば処 あさひや」がありました。

こぢんまりとしたお店だけど、パリッと白い暖簾がいい感じ。

昼どきは次々と町の人々が吸い込まれて行く、長年変わらずそこにある、町の食堂です。

ほどよい広さの店内にはカウンターや小上がりがあり、とても清潔でくつろげます。
「いらっしゃい!」と、親しみやすい笑顔で迎えてくれるのが、店主の柴田喜世子さん。厨房の奥でテキパキと調理しているのが長男の充さんです。

喜世子さんは店の名物女将。長年の従業員の竹林美佐子さんとともに、やさしくて朗らかな対応が魅力的です。

創業から60年を超える、老舗の食堂ですが、「普通の町の食堂なんですよ。いろいろ聞かれても、恥ずかしくなっちゃう」

そばを始めたのは今は亡き、2代目で喜世子さんの夫の利明さんでした。
「そばは今も自家製麺で、毎朝作ります。ほかにも、そばに限らず丼ものやラーメン、何でもありますよ」と充さん。

手際よく麺を茹でる喜世子さん。夫を亡くして、充さんが帰ってくるまでの10年ほどは、一人で厨房を守っていました。今では頼もしい充さんがいるので安心ですね。

細めで、つるりと喉越しのよい更科そばは変わらぬおいしさ。

大根おろしやネギ、山菜、花かつおなど薬味もたっぷり、えびおろしそばは1,050円。盛りの良さも店の自慢です。

こちらのそばのメニューには、「おそばにもう1品」というおすすめが書いてありました。
それが、えび天200円と、とんかつ250円。
そばにトンカツですか! 
「みんなトンカツ好きですよ。カツラーメンもよく出ます」充さん。

さて、そんなカツが載っている、もうひとつの人気メニューがあるのです。
「うちで注文されるそば全体と同じぐらいの数が出ます」

カツカレー900円です!
カレーの上のカツに、デミグラスソースをかけています。これは初めて見るスタイルかも。

喜世子さんが素早く運んでくるのは、やっぱりカツカレー。今日は帯広から仕事で来ていたお客さんたちが、地元の人のウワサを聞きつけ、みんなでランチにやってきたんだって!

「本当ですね。おいしい!」

我々もいただきました。甘めのまろやかなデミグラスソースと、ピリッとスパイシーなカレーがバツグンのバランス。タマネギを大量に炒め、あとは豚肉だけというシンプルでいさぎよいカレーがまたたまらず、ごはんがすすみます。これはクセになりそう。 大好きな人は通常の2倍ぐらいの大盛りもペロリと食べてしまうという。

ちなみに、まかないから生まれた、かしわラーメン800円。
そばつゆにラーメンが入った不思議な味わいもまたユニークですが、ハマる人が続出なのです。

食事に必ず付いてくる喜世子さん手作りの季節のおつけものにも、心がなごみます。この日はフキの醤油漬け。シャキシャキとしておいしかった。
「セルフだけどコーヒーもあるから、飲んで行ってね」と優しく声をかけてくれる喜世子さん。きっとまた、この食堂に寄りたくなりそうです。

ちなみに充さんは大阪のホテルや、札幌のイタリアンの店で腕を磨いた料理人。夜は近隣のおいしい食材を生かした、完全予約制の洋食コースを出していて、地元の人に喜ばれています。
今度標茶に来たら、洋食コースを予約してもいいですか?

そば処 あさひや
川上郡標茶町旭2-3-10
電話 015-485-2535
営業時間 11:00~19:30
定休日 第1・3日曜、第2・4火曜日
※お盆などには変動あり

5軒目 釧路町「洋食・スパゲティ レストラン千房」

私たちの旅もそろそろ終了。今日は釧路市の隣にある釧路町にやってきました。
“釧路名物”をいただく前に、まずは寄り道。
広大な釧路湿原は4つの市町村にかかっているので、私たち取材班もさまざまな角度から釧路湿原を眺めることができましたが、今日は釧路町内にある細岡展望台に出かけてみます。

お、タンチョウの「飛び出し注意」の看板。さすが湿原らしい看板ですね。気を付けましょう!

釧路湿原の東側にある「細岡展望台」は、大型バスは入れませんが、眺めの良さと乗用車でのアクセスの良さから、とても人気のある展望台です。
駐車場から近く、歩いて5分ほど。
見渡す限り広がる広大な湿原、大きく蛇行する釧路川など、自然の壮大さを体感できます。この日は残念ながらよく見えませんでしたが、雄阿寒岳や雌阿寒岳を望むことができます。

釧路湿原駅も近く「くしろ湿原ノロッコ号」で訪れる人も多いのですが、列車の本数が少ないので、帰りの時間を確認しておくのがおすすめですよ。

かつて“不毛の地”とされた釧路湿原が、国立公園に指定されて今年で30年。今では多くの動植物を育む“命のゆりかご”として知られるようになりました。展望台近くにある「細岡ビジターズラウンジ」でスタッフさん手作りという、愛嬌のあるタンチョウがかわいいスタンプを押してみました。
「細岡ビジターズラウンジ」は展望台を訪れた人たちのための休憩施設。 おみやげや軽食の販売もしているので、カフェのように過ごすことができます。

さて、そろそろ町中に、釧路の人々が愛してやまない、ソウルフードを食べに行きますか。

郊外型の大型店が立ち並ぶ宮原大通沿いで、住宅地のエリアに入ると見えてきたのはオレンジの看板。「レストラン千房」がありました。
混雑する昼を避けて夕方にやってきましたが、もう車が並んでいますね。

店に入るとガコン、ガコン、ガコン、とリズミカルに響く音。
厨房をのぞくと麺が宙に舞う姿が見えました。
フライパンを振っている音なんですね。

アツアツの鉄板の上に大量の炒めたスパゲティを載せ、大きなカツとミートソースをかければ完成です。早い!

そうです。これが釧路の人たちが「無性に食べたくなってしまう」というソウルフード。釧路市にある名店「泉屋」では「スパカツ」と呼ばれていますが、この店では「ミートカツ」950円。カツを載せないミートソースだけのスパゲティも大人気です。

おやおや?近所からやってきたという常連の家族3人。何をしているのかな…。
おぉ、なるほど!紙ナプキンで鉄板のソースがハネないようにガードしているのですね。

こちらの笑顔のご夫婦は紙のエプロン。お店の人に言うともらえますので、お好きなスタイルでどうぞ!
ちなみに奥さんが食べているのは魚介たっぷりのあんをかけた海鮮スパゲティ。「あっさりしていておいしいの」と、おっしゃいますが、皿からはみ出す激盛りです。

厨房に立つのは、店主の富田信幸さんと娘の紗希子さん。2人で手際よくメニューをこなしていきます。富田さんは名店「泉屋」の厨房に10年勤めた後、1997年からこの店を始めました。
3kg近くある大きな鉄のフライパンで、たくさんオーダーが入っても6~7人分なら1度に麺を炒めます。だから出てくるのが早い。

麺の仕込みを始めるのは朝5時から。決してアルデンテではない、やわらかな日本のスパゲティらしい食感も魅力。1.9mmの太目のスパゲッティを茹で、フライパンで炒めるとちょうどモチモチとした食感となるよう、絶妙の茹で加減で仕上げます。「これが実は一番肝心な作業。この食感にするには技術が必要なんです」
ひき肉たっぷりのミートソースは、ケチャップベースでカツオだしを加えたもの。4~5日寝かせてようやく完成する手の込んだものです。

さて、セルフサービスの味噌汁と一緒に私たちもいただきます。

ソースは比較的甘めですが、程よい酸味があり飽きのこないマイルドな味わいです。麺にしっかりとからみ、最後のひと口までアツアツです。

もう1種類、おすすめの「和風ミート」850円は数年かけて「今年ようやくレシピが完成したんだよ」という渾身の一品。まろやかな味噌のミートソースのおいしいこと!トッピングのショウガの香りも効いています。
オーブンで焼いた味噌にヒミツの調味料をいくつか加えて…。「お父さん、すぐに秘密を言っちゃうから」と笑う紗希子さん。ハイ。秘密にしておきましょう。

研究熱心でサービス精神にあふれた富田さんが作りだしたメニューは多彩です!
塩味の「千房風」、ベシャメルソースで麺を焼き上げる「グラタン」、洋食のごはんものも、ピラフとカツ、ナポリタンのセットや、ハンバーグとピラフのセットなどボリュームがあるメニューが充実していました。

重いフライパンを振り、元気に対応してくれた富田さんですが、実は最近入院することがありました。夜は2時間と短い営業時間になりましたので、お間違いなく。

どうぞ体を大切に、家族で仲良くお店を続けてくださいね。

洋食・スパゲティ レストラン 千房(ちぼう)
釧路郡釧路町曙2丁目1-3
電話 0154-37-5024
営業時間 11:00~15:00、17:00~19:00
定休日 水曜

※コラムに記載のメニュー料金はすべて税込価格です。

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