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イタリア「ヴェネツィア流はしご酒」

バカンスのススメ 非日常の世界に遊ぶ vol.3

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“アドリア海の女王”と謳われる、イタリア・ヴェネト州の州都ヴェネツィア。
世界中から観光客の集まるこの街で、今回はちょっとヴェネツィアーノを気取り、立ち飲み居酒屋「バーカロ」を巡ってみよう。


バーカロ巡りへのいざな

イタリア北東部、アドリア海に面するラグーナ(潟)に築かれた水の都、ヴェネツィア。本島の真ん中をS字に貫くカナル・グランデ(大運河)を中心に、細い運河が縦横に張り巡らされ、都市国家として繁栄を極めた往時の面影を残す独特の佇まいに、多くの旅人たちが魅了されてきた。いつかは行ってみたい憧れの地であり、一度でも訪れればその虜になって、近いうちの再訪を夢想してしまう──この街には何か、人を惹きつけて止まない魔力がある。

ゴンドラに揺られて運河をたゆたったり、荘厳な教会を巡ったり、ヴェネツィア派の巨匠たちの名画を鑑賞したり、サン・マルコ広場の老舗カフェで思索に耽ってみたり。ヴェネツィアの楽しみ方はさまざまだ。

また、ヴェネト州は、イタリアでも上位を争うワインの生産量を誇る。ヴェネツィアから車で1時間も走れば、世界で最も売れていると言われるスパークリングワイン、プロセッコの産地だ。そこで、ヴェネツィアで気軽にワインが楽しめる「バーカロ」巡りはいかがだろう。

バーカロとはヴェネツィア独特の表現で、立ち飲み居酒屋のこと。市内には80軒を超えるバーカロが点在していると聞く。典型的なバーカロでは、チッケット(複数形はチッケッティ)と呼ばれる一口サイズのつまみがバンコ(カウンター)に何種類も並ぶ。ワインを手におしゃべりを楽しみながらチッケットを数種類つまみ、また次の店へはしごするのがヴェネツィア流らしい。


ズラリと並んだ魅惑のチッケッティ

アカデミア美術館からほど近い、小さな運河沿いにある「カンティーネ・デル・ヴィーノ・ジャ・スキーアヴィ」。朝から晩まで、地元の人々や観光客で賑わっている。家族経営のバーカロで、マンマのアレッサンドラさんは約40種類ものチッケッティを作り続けて半世紀になるという。「1日でだいたい1500個のチッケッティが売れますよ」と、息子のトマソさん。

バッカラ・マンテカート(干し鱈のペースト)や、地元のサラミ・ソップレッサ、アンチョビとタマネギのマリネなどをバゲットに載せた定番ものに加えて、ゴルゴンゾーラ&洋梨、小海老&アーティチョーク、マグロ&ラディッキオといった、魅力的なチッケッティがズラリと並んでいる。ひとつ1.2~1.5ユーロ。ついあれこれ頼みたくなってしまうが、ここで食べ過ぎは禁物。ワインを1、2杯と、吟味したチッケッティを2つほど楽しんだら、次のお店に行ってみよう。


洒落たつまみと、老舗の情緒と

観光客で溢れるリアルト橋のたもと、カナル・グランデに面してバーカロが軒を連ねる一角がある。魚市場に近いこともあり、活気のある界隈だ。そのなかのひとつ、「オステリア・バンコジーロ」は2000年にオープンした店で、レストランも併設している。

バンコには15種類ほどのチッケッティが並ぶ。イワシの酢漬け、トマト&アンチョビのほか、ナスのピューレにタコとラードを載せたもの、カレー風味の小海老とリコッタチーズなど、素材にひと手間かけ凝っていて、バゲットの代わりにポレンタ(トウモロコシの粉の練り物)やイカスミ入りポレンタを使い、見た目もなかなか洗練されている。カナル・グランデに臨むテラスにはテーブルが並べられ、行き交う船を眺めながら、ゆったり過ごすこともできる。ちなみにチッケットの値段は、バンコではひとつ2ユーロ、テーブル席ではひとつ2.5ユーロだ。

魚市場近くのバーカロといえば、ヴェネツィアで一番古いとされる「カンティーナ・ド・モーリ」がある。創業はなんと1462年だという。狭く薄暗いながらも味のある店内は昔ながらの情緒に溢れ、常連客も多い。ワインにこだわり、バッカラ・マンテカート、クロケッタ(コロッケ)、グリル野菜、ソップレッサ、チーズといった典型的でシンプルなチッケッティがバンコに並ぶ様は、「これぞバーカロ」。「フランコボッロ(切手)」と呼ばれる小さなサンドイッチも人気だ。

もう一軒、100年以上続く老舗が「トラットリア・カ・ドーロ アッラ・ヴェドヴァ」だ。最も美しいヴェネツィア貴族の館と讃えられる「カ・ドーロ」の近くにあり、店の入り口部分は立ち飲みスペース、奥はレストランになっている。アドリア海で獲れた魚介のマリネやポルペッタ(ミートボール)をはじめ、バンコのショーケースに並んだ美味しそうな惣菜に、思わず目移りしてしまう。


路地裏の隠れ家ワインバーで

サン・マルコ広場から細い路地を右に左に通り抜け、中庭のごとくこぢんまりした広場に見つけた「イ・ルステギ」。ソムリエだった両親から店を継いだというジョヴァンニさんが一人で切り盛りする、隠れ家的なワインバーだ。手軽な地元のワインから、バローロ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノといったイタリアの高級ワインまで、グラスで提供してくれる。

メニューには興味をそそられる料理がいろいろと書かれているが、軽くつまむのならば、「チッケッティの三種盛り合わせ」を。ソップレッサとモデナ産白バルサミコ酢の野菜酢漬け、水牛のモッツァレッラチーズとドライトマトのクリーム&パンテレッリア島産オレガノ、アドリア海産イワシのオイル漬けのレモン風味サラダなど、その時々に手に入るこだわりの食材を用いて作られた逸品が揃う。街中の喧騒が嘘のようにひっそりとした路地裏で、美味しいワインとチッケッティを堪能する。ヴェネツィアの夜が静かに更けていく。

さて、そろそろホテルに帰ろうか。ほろ酔い気分で迷路のような路地を歩いていると、だんだん方向感覚が怪しくなってくる。あれ、さっきもこの小さな橋を渡ったような? ふらふらと彷徨っているうちに、いつのまにか中世にタイムスリップしてしまった……何てことにならないように、飲み過ぎにはくれぐれもご注意を。

文/飯田未知(スカイワード編集部)
撮影/角田 進


Information on Venezia

ヴェネツィアへのアクセス

  • 札幌(新千歳)から東京(成田)で乗り継ぎ、ヘルシンキ国際空港へ。
    ヘルシンキ国際空港はJAL便、フィンエアーとのコードシェア便が毎日運航。
    さらに乗り継ぎヴェネツィアヘ。
  • 東京(成田)―フランクフルト線、東京(羽田)―ロンドン線、パリ線はJAL便が毎日運航。
    各地で乗り継ぎヴェネツィアへ。

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2017年10月より増便となった東京(羽田)―ロンドン線(JL041)のご利用で、ヨーロッパ各都市の乗り継ぎがますます便利になりました。JL041便に限りエコノミークラスご利用のお客さまも羽田国際線サクララウンジのご利用が可能です。(*1)JALのヨーロッパ便は、全路線『JAL SKY SUITE』を導入。心地よい寛ぎとサービスをご体感ください。

*1 受付時間は23:30以降です。一部ご利用いただけないサービスがございます。

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