食べるぽ vol.4
食べて地元を愛すルポ vol.4「サンマ」
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おいしさのふるさと根室沖の漁場は、
肥えたサンマの通り道。この記事を見る地元おすすめスポット世界中のバードウオッチャーを惹きつける落石(おちいし)の海。この記事を見る
地元限定アイテム根室さんま祭りから生まれた
"根室さんま節ラーメン"。この記事を見るご当地グルメ新しい味を生み出す、
40年つづく名店。この記事を見る
根室のサンマは、朝帰りする。
根室には「日帰りサンマ」なるものがあるという情報を知り、気になっていた。ふつうのサンマは宿泊するのか?
「深夜に操業して、翌朝には花咲港に水揚げされるサンマを『日帰りサンマ』と呼んでいます。漁場が近いから、すぐ港に戻れるんです」と、根室市水産経済部水産振興課の畑崎恭兵さん。
サンマは、エサを求めて、黒潮に乗り千島列島あたりまで北上、そこで栄養を蓄えて、産卵のために南下するという。南下のスタート地点に近い根室沖では、丸々と太ったサンマが捕獲できるため、根室のサンマはおいしいのだ。
サンマ漁は、サンマのいる場所で行う。あたりまえだが、「日帰りサンマ」を理解するにはちょっと重要である。根室の漁港のうち、サンマの漁場に最も近いのが花咲港だ。それでも、海の状態やロシア海域での操業の決まりなどによって、操業から帰港まで2日ほどかかるらしい。ところが、サンマの群れが港により近い海を通る時期がある。夜中に獲れたサンマの朝帰りが可能になるのだ。これが、鮮度抜群の「日帰りサンマ」と呼ばれるものだ。サンマは鮮度が命。根室のサンマがおいしい理由は、ここにもある。
秋サケ漁が始まる落石(おちいし)漁港にもサンマが揚がる。運がよければ、船上沖詰された鮮度が自慢の落石ブランド「しお風さんま」に出合えるかも。
新鮮なサンマは、クチバシが黄色くて、持ったときにピンと立つ。
漁業のまちの今昔物語。
根室といえば、平成21年に銚子に首位を譲ったものの、平成10年~20年の11年連続、平成22年~昨年の6年連続で、サンマの水揚げ量日本一である。
漁獲量が劇的に伸びたのは昭和23年。現在主流の「棒受け網漁」が導入されてからだという。この漁法は、サンマの寄ってくる波長の光を使って群れを集めて一気に網ですくいあげるもので、網目の大きさで獲る魚を調整する「流し網漁」よりも、大量にサンマが獲れるのだ。
圧倒的な漁獲量はもとより、漁業者や漁業協同組合、市役所が一体となり、良質なサンマを世に送り出し、PRした結果、「サンマのまち・根室」は誕生した。サンマに関わる人たちの日々の努力が、根室のサンマの価値を高めている。
8~11月は「棒受け網漁」の大型船がサンマ漁をする。シーズン初期の7~8月は、今は少なくなった「流し網漁」の操業。
毎年9月上旬に、北海道庁赤れんが庁舎の前庭で開催される「根室市さんまフェア」。有名になってもなおPRを怠らず、「サンマのまち」のブランド力を保っている。
- ●取材協力:根室市水産経済部水産振興課
エトピリカやケイマフリが舞う。
落石(おちいし)ネイチャークルーズでは、落石エリアに棲息しているエトピリカやウトウ、チシマウカラス、ケイマフリなどの海鳥が見られる。もっとも、9~10月は、産卵期が終わり巣立ってしまうために、観察できる海鳥の数が落ち込む時期なのだという。ベストシーズンは冬から夏。「サンマを味わうついでに海鳥を見てこよう!」などと思ってはいけなかったのだ。実際のところ、乗船するのは、研究者やシャッターチャンスを狙うカメラマンといった本気の人たちが多いらしい。しかも、その1割は海外からの観光客で、冬はヨーロッパから、夏は台湾や香港から来る人が多いのだとか。もちろん、私のように「エトピリカを見てみたい!」という理由でも乗せてもらえる。
落石の沖合いに浮かぶ「ユルリ島」は、エトピリカなど北方系海鳥の営巣地。
第十一北信丸の船頭・橋由信さんは、漁師歴40年を超えるベテラン。本業の合間をぬって船を出してくれる。
落石ネイチャークルーズの面白いのは、現役の漁師さんたちが実際に漁に使う船を使っているところ。漁船が通年、この手のクルーズを担っているのは日本でもほかにないらしい。漁船だと、鳥が警戒しないうえに、目線が海に近くなるので、海鳥の観察にはもってこいだという。次こそは、海を知り尽くした漁師さんの船に乗ってエトピリカに会うべく、ベストシーズンに再訪を誓って落石を後にした。

- 落石ネイチャークルーズ
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【住所】北海道根室市落石西112番地
エトピリ館(チケットの予約・販売・乗船受付)
【お問い合わせ】TEL 0153-27-2772
【運航時間】早朝便/6:00~8:30、
1便/9:00~11:30、2便/13:00~15:30
【定休日】早朝便/11~3月は運休、荒天による運休あり
【料金】中学生以上7,000円、小学生5,000円(5年生以上、保護者同伴) ※完全予約制(2日前まで、最低催行人数3名) 【ホームページ】http://www.ochiishi-cruising.com

ジャミサンマが根室の名物土産に。
かつお節ならぬ「さんま節」を聞いたことがあるだろうか?細めのストレート麺をスープに絡めて口に入れると、ほのかにサンマの香りがする、さっぱりとした味わいの「根室さんま節ラーメン」。根室名物のサンマからつくったスープのラーメンが、手軽に自宅で楽しめる。
根室さんま節ラーメン…216円(税込)。お土産や贈りものにぴったりの4食入り…1,080円(税込)・10食入り…2,580円(税込)も。
さんま節の風味を楽しむなら、麺とスープだけでシンプルに。お好みの具をトッピングしてもいい。※写真は調理の一例です。
製造しているのは、根室市内で3店舗のコンビニエンスストアを経営する株式会社タイエー。お土産にぴったりのインスタントラーメンだが、2003年に「根室さんま祭り」を盛り上げるグルメとして誕生した。評判だったため、翌年に商品化したという。「ジャミサンマ(商品にならない小さいサンマのこと)を有効利用しようと、釧路水産試験場が、さんま節の開発を進めていました。まちに貢献したいという気持ちがあったので、それを使って、根室さんま祭りを盛り上げようと、実行委員会の仲間たちとつくったのが『根室さんま節ラーメン』です」と、社長の田家徹さんが誕生秘話を話してくれた。
現在は、田家社長自らがさんま節をつくっているという。一度につくるのは5kg、5,000食分。焼いて脂を落として、さらに湯せんで脂を落として、ミンチにしてから乾燥させ、それを真空パックにする。なんという手間だろう。田家社長の地元を思う心が、根室名物を支えている。

- タイエー西浜店
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【住所】根室市西浜町3丁目10番地1
【お問い合わせ】TEL 0153-29-2400
【営業時間】24時間営業
【定休日】年中無休

お茶漬けで味わうお寿司。
根室の誇る二つの名産品・サンマと昆布を使った料理がある。ご当地グルメ「根室さんまロール寿司」だ。「根室産の棹前(さおまえ)昆布で巻く」、「具材に根室産サンマ、北海道産の大葉・ネギ・白ごまを使う」などの10個のルールに則りながらも、参加店舗が個性を競っている。
根室港からほど近い繁華街にある「和ダイニング すしもと」のそれは、おもしろい。猫足昆布という、その名のとおり猫の足のような形をした昆布で引く、お出汁が添えられて出てくるのだ。はぼまい昆布しょうゆをつけて、そのまま食べるもよし、お出汁に浸してお茶漬け風にするもよし。同じものなのに、驚くほど味わいが変わる。
「うちの『根室さんまロール寿司』はお茶漬けでいくと息子が決めたとき、なんで?と驚かれたみたい。でも、食べてみたら、おいしいね、いけるねと、けっこう評判がよかったの」と、当時の様子を女将さんが明かしてくれた。一品で、二つの名産品を食べられるうえに、二つの味を楽しめるというのだから、何とも贅沢である。
「根室さんまロール寿司…860円(税込)」。お出汁も、甘酢で締めた昆布も、繊細な味わい。
根室さんまロール寿司を昆布のお出汁にひたひたに浸して、お茶漬けのようにいただく。酢締めの昆布の風味が際立つ。
サンマの刺し身はここから始まった。
鮮度の高さが求められるとはいえ、北海道では珍しくもないサンマの刺し身。しかし、昔は、根室にもそんな食べ方はなかったらしい。30年ほど前、あるテレビ番組の取材でサンマ尽くしの料理をつくったとき、マスターが考案した一品が、サンマの刺し身だった。あれほど新鮮なサンマの獲れる根室でさえ、生で食べるのを不安がる人が多かったという。ちなみに、地元の人は、一味唐辛子を入れたしょうゆで食べるのだとか。
サンマの刺し身は大好きだが、私が選んだのは「サンマのなめろう」。玉ねぎとしょうがを合わせて、味噌で味つけしている。それだけでもおいしいが、昆布しょうゆをたらすと、旨みが増す。上品な味わいが口に広がる。これまた、幸せにしてくれる一品である。
見るからに新鮮で美しい、サンマの刺し身。根室に行ったらしょうゆに一味唐辛子を振って、通の味を楽しみたい。
新鮮だからこその「サンマのなめろう…800円(税込)」。
- 和ダイニング すしもと
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【住所】北海道根室市緑町2丁目10番地
【お問い合わせ】TEL 0153-24-1148
【営業時間】17:30~24:00(LO23:30)
【定休日】日曜

秋の定番をアジアンテイストで。サンマのチリソース

サンマ | 3尾 |
---|---|
小麦粉 | 少々 |
揚げ油 | 適量 |
長ねぎ | 1/2本 |
しょうが | 1片 |
にんにく | 2片 |
油 | 大さじ1杯 |
チンゲン菜 | 1株 |
塩、油 | 各少々 |
水 | カップ1/2杯 |
トマトケチャップ | 大さじ4杯 |
しょうゆ、酒 | 各大さじ1杯 |
豆板醤 | 小さじ1杯 |
水溶き片栗粉 | 少々 |
長ねぎの青身 | 適量 |
- サンマは頭と内臓を処理して3枚におろし、腹骨を削ぎ取ってひと口大に切ります。ポリ袋にサンマと小麦粉を入れてまぶし、高温に熱した油でカリッと揚げます。
- 長ねぎ、しょうが、にんにくはみじん切りにします。チンゲン菜はほぐして洗い、塩と油を入れた湯で色よく茹でます。
- フライパンに油を熱してしょうが、にんにくを入れて炒め、香りが立ったら長ねぎ、水、調味料を加えてひと煮立ちさせ、水溶き片栗粉でとろみをつけて、サンマを加えて絡めます。
- 皿にチンゲン菜を輪になるように並べ、中にサンマのチリソースを盛って長ねぎの青身のみじん切りをあしらいます。
頭と内臓を処理するときは、まな板のうえに紙を敷くと、紙ごと捨てられて便利。
3枚におろしてから、腹骨を削ぎ取る。
- チリソースに水溶き片栗粉でとろみをつけてから、揚げたサンマを入れる。
- ★三枚おろしのしかたは、ほかのレシピにも共通です。
インパクトあり!の秋ごはん。サンマのまんま

サンマ | 2尾 |
---|---|
塩 | 少々 |
青じそ | 6枚 |
のり | 2枚 |
ご飯 | 2膳分 |
大根おろし | 適量 |
しょうゆ | 少々 |
- サンマはしっかりと塩をして頭と内臓をつけたまま、魚焼きグリルで両面こんがりと焼きます。焼けたら背の方を開けて、中骨と内臓をはずします。
- まきすの上にのりを乗せ、向こう側を2㎝あけてご飯を広げ、青じそを敷いてサンマを置き、のり巻きの要領で巻きます。8等分に切り、切り口を上にして盛ります。同様にもう一本巻きます。
- しょうゆをたらした大根おろしを添えて、一緒にいただきます。
焼いたサンマを背中から開いて、中骨と内臓をはずす。
手前に背中がくるようにサンマを置いて、のり巻きのように巻いていく。
ふわふわのやわらかサンマ。揚げサンマの甘酢しょうゆ漬け

サンマ | 2尾 |
---|---|
コショウ、小麦粉 | 各少々 |
揚げ油 | 適量 |
長ねぎ | 1本 |
しょうが | 1本 |
水 | 大さじ1杯 |
しょうゆ、酢、酒、水、てんさい糖 | 各大さじ1杯 |
長ねぎの青身、粗みじん切り唐辛子 | 各少々 |
- サンマは頭と内臓を処理してサッと洗ってから3枚におろし、コショウを振って全体に小麦粉をまぶします。尾の方から皮が外側になるようにクルクル巻いて、爪楊枝で留めます。
- 中温に熱した油にサンマを入れ、カリッとなるまで揚げて爪楊枝を抜きます。
- 長ねぎは縦半分に切ってから斜め薄切りにし、青身は半分に開いて斜め薄切りにして水にさらします。しょうがは千切りにします。
- ボウルに分量の水、調味料を入れて混ぜ、サンマが熱いうちに浸します。長ねぎ、しょうがも加えて上下を返しながら30分ほど漬けます。
- 器に盛り、長ねぎの青身と粗みじん切り唐辛子をあしらいます。
皮が外側にくるようにして、尾から巻くこと。
サンマを漬けるタイミングは、揚げてすぐの熱いうち。長ねぎ、しょうが、粗みじん切り唐辛子も合わせて入れる。
- 星澤幸子先生 プロフィール
- 北海道南富良野町生まれ。星澤クッキングスタジオ 主宰。
札幌テレビ初の夕方のワイド番組の放送開始から毎日生出演し、料理を紹介して25年。
紹介数は6,300品にのぼる。それによるギネス記録保持者であり、自己の記録を更新中。
北海道の食材にこだわり、誰にでも作れる手軽な料理を紹介して、独自のスタイルを確立し中高年の主婦を中心に、幅広い世代から支持を得ている。

