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週末旅のススメ 日本全国厳選トリップ vol.3

vol.3 埼玉川越「川越のテロワールを映し出す、芳醇なクラフトビール」

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蔵の街、川越。サツマイモを使ったスイーツ、うなぎといった小江戸グルメが訪れる人々の舌を満足させている。そんななか、まさに「小江戸」の名を冠にし、国内外で高い支持を得ている川越発のビールがある。「COEDOビール」。このビールが生まれる背景には、川越の気候風土、そして、農業がたどった歴史や農村文化が深く関わっている。

やせた土地の農業を支えたのは

火山灰土である関東ローム層に厚く覆われる武蔵野台地に位置する川越は、農業は厳しいとされていた。しかし江戸時代中期、人口増への食糧対策もあり、やせた土地にも強いというサツマイモの栽培が始まった。舟によって江戸に運ばれたサツマイモはそのおいしさから人気に火がつき、焼き芋ブームが起きたこともあって、江戸っ子たちからは「サツマイモといえば川越」と称されるほどに。

「同じ畑で同じ作物を作り続けると連作障害が出るため、川越では古くから麦を植える『緑肥』という農法が行われてきました。農家さんたちはそのまま麦をすき込んでいたのですが、この麦を有効活用できないだろうか――。それがビールを造ろうと考えた原点でした」
そう話すのは、コエドブルワリー代表取締役兼CEOの朝霧重治さん。
学生時代、バックパッカーとして世界中を旅した。土地土地で忘れられないビールがあったと言う。
「イギリスのロンドンのパブでは、メーカーも種類もたくさんありすぎて、オーダーの仕方がわからず、まごつくほど(笑)。サーバーの人に教えてもらいながらエールビールを飲むと、泡は少ないけれど口当たりがなんとも柔らかい。ぬるくてもおいしいので、ゆっくり味わえました。ドイツ・ミュンヘンでは中世から続くビアホールへ。ロンドンとはまったく違うビールカルチャーがありました。それぞれに歴史があり、食や農の文化に根ざしていて、ビールっておもしろい! と目覚めてしまったのです」

捨てられていたサツマイモを再利用

日本とは異なるビールの魅力に触れ、その楽しさを伝えていきたいと考えた。試行錯誤を重ね、1996年、コエドブルワリー初のビール「紅赤-Beniaka-」が完成する。明治時代から川越で多く栽培され、その後、川越のサツマイモの代名詞ともなった「紅赤」を原料にした。
「規格外品として廃棄されていたサツマイモを利用できないか、という思いからスタートしました。サツマイモは焼酎などの蒸留酒になる、つまり、アルコールの原料になる。じゃあサツマイモをビールの製法で加工してみよう、と」
折しも1994年の規制緩和で小規模醸造が認可され、全国各地で「地ビールブーム」が巻き起こっていた。しかし、地域おこしが目的の地ビールが多く、ビールとしてのクオリティは玉石混交。「観光地のお土産品」というイメージが先行してしまっていた。そんななか、コエドブルワリーが目指したのは「世界から認められる本格的なクラフトビール」。

「クラフトビールとは、クラフツマンシップ、すなわち熟練した職人の技術と手仕事から生まれるビール。僕らが標榜するビールを端的に表現していると感じました」と朝霧さん。「職人によるクラフトビール」を実現するため、1997年、ドイツからブラウマイスターを招く。「コンサルタントやアドバイザーではなく、一緒に汗を流しながらビール造りのノウハウはもちろん、精神的なことも伝授してくれる『師』として来てもらいました。日本酒でいえば杜氏のような存在です」
5年間に渡り、職人たちはブラウマイスターのもとでビール造りを学んだ。「その礎があったから、今のCOEDOがあるのです」と朝霧さん。国内外のコンクールで受賞するなど、まさに日本のクラフトビールの先駆けとして高いクオリティを実現しながら、文化を発信してきた。

小江戸グルメとの豊かなマリアージュ

現在ラインナップは6種。もっとも新しい「毱花-Marihana-」は、毱花=ホップを贅沢に使ったセッション・IPA(ホップの風味が強く、アルコール度数が低めのビール)。口に含んだ途端、グレープフルーツのような柑橘系の香りが華やかに立ち上り、ホップならではの心地よいほろ苦さが広がる。
食事とのペアリングも意識する。たとえば、川越名物 うなぎの蒲焼は、「タレの甘じょっぱさには『紅赤-Beniaka-』を、炭火で焼いた香ばしさにはまろやかでコクのある『漆黒-Shikkoku-』を」と朝霧さん。
クラフツマンシップを重んじながら、しかし、「COEDOは本当の意味での地ビールである」と朝霧さん。最後にこう言葉を結んだ。
「最初の『紅赤-Beniaka-』は川越のサツマイモがなかったら誕生しなかった。川越という土地が持つ歴史や背景、そして気候風土に根ざし、『この地で造られる意味』がある。ワインでいうテロワールを表現していくことが、僕らCOEDOの使命だと思っています」

文/中津海麻子
撮影/鮫島亜希子
写真提供/コエドブルワリー

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掲載情報は2019年10月21日時点のものです。

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