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お酒とたばこのリスク

第7回目は「お酒とたばこのリスク」と題し、飲酒割合や喫煙率の高い北海道民の生活嗜好や、そこに潜むリスクについて、日本医療大学総長の島本和明先生に伺いました。

島本 和明

日本医療大学
総 長

日本高血圧学会名誉会員
医学博士

お酒とたばこのリスク

2020年に厚生労働省より公開された「国民生活基礎調査」では、北海道の喫煙率は男女とも年々減少傾向にありますが、全国平均よりも高く、特に女性の喫煙率は全国で最も高い状況が見て取れます。また、厚生労働省「国民健康・栄養調査」(※1)と、北海道「健康づくり道民調査」による「生活習慣病のリスクを高める飲酒をしている者の割合」(※2)を比較した飲酒割合のデータを見ると、全国平均で男性14.6%、女性9.1%に対して、北海道は男性18.2%、女性12.0%と、男女とも全国平均を上回る結果となっています。
今回は「お酒とたばこのリスク」についてと、「なぜ北海道では喫煙率と飲酒割合が高いのか」についてお伝えします。

※1:2017年に厚生労働省より公開された「2016年度 国民健康・栄養調査」より引用

※2:2017年に北海道から公開された「2016年度 健康づくり道民調査」より引用

喫煙は、がん発生要因の第1位
飲酒は、少量でもさまざまな病気の発症リスクを高める

喫煙は、がんの発生要因の中でも特に大きな原因と考えられ、しかも北海道民のがん死亡率は全国でもトップクラスです。中でも肺がんの死亡率は女性で全国ワースト1、男性はワースト2となっています(※3)。これには道民の喫煙率の高さも関係していると考えられるのではないでしょうか。
また飲酒は、例え少量でも高血圧のリスクを上げ、1日当たり純アルコール量として20g程度、ビール中瓶で1本、日本酒なら1合、これ以上の量の飲酒を続けると肝機能障害、膵炎、食道がん、大腸がん発症の可能性が上がるなど、さまざまな疾患のリスクに関する報告もあります。

※3: 2020年に公開された国立がん研究センター・がん情報サービス「がん登録・統計」より引用

本州の伝統的な思想や習慣から解放された
先人たちが生んだ新たな習慣の陽と陰

なぜ北海道では喫煙率と飲酒割合が高いのでしょうか。
北海道民の先祖は、ほとんどが本州各地から移住してきた人たちです。そのうえ、まだ150余年の歴史しかありません。歴史が浅く、新たに築かれてきた社会だけに、現在の北海道での暮らしには、本州各地に残る伝統的な秩序、思想や習慣、しきたりなどについて、それほど強く実感する機会はありません。
ですから「あそこに住む人は、よくお酒を飲みに出掛けている」、「近所のあの人は禁煙場所でたばこを吸っていた」など、となり近所で噂され指摘されるようなこともないわけです。
本州から移住してきた北海道の先人たちの思いには、伝統的な秩序、思想や習慣に縛られることや、〝となり近所の目〟を気にすることも必要もない「自由」への解放感が、「好きなことを好きなようにしたい」という思いとして、多くの愛飲家、愛煙家を生み育て、「好きなように自由でありたい」と考える良い部分が、現在の北海道民の健康に悪い習慣として残ってしまっているのではと私は思うのです。

他人や周りの自由も重んじることのできる
北海道民の新たなフロンティア精神を築いてほしい

「自由」は、それはそれで良いこともあると思います。ただ、健康面で考えると、特にたばこに関しては、ご本人だけでなく、周りの方にも悪い影響を及ぼす「受動喫煙」という問題があります。自分に対しては自由で楽観的であったとしても、周りに対しては危機感を持てる、他人の自由にも気遣える、そんな自由を重んじる北海道民というフロンティア精神を築き、育て、受け継いでいってほしいと思っています。

お酒は「節酒」、たばこは「禁煙」
将来の健康を考えた生活習慣を身に付けよう

夏のビール、中瓶1本で終われるでしょうか?寒くなってくると熱燗もおいしいですよね。厚生労働省のガイドライン(※4)でも、お酒を飲んではいけませんとは言っていません。あくまでも飲み過ぎには気を付けましょうということです。ただし、たばこに関しては禁煙を目標にしてほしいと思います。
20年先、30年先、将来の健康を意識した行動、生活習慣を考えてみてほしいと思います。

※4: 厚生労働省が公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」

自由を愛する精神は大切ですが、自身や周りの人の健康に害を及ぼす習慣は改めたいですよね。お酒はほどほど、たばこは百害あって一利なしです。開拓スピリッツをもって険しい北海道を開拓した先人たちを見習い、健康スピリッツをもって日本で一番の健康な人たちが集まる地域として、北海道を道民一人一人が盛り立てていきたいものです。
次回は、最近よく耳にすることが多くなった「フレイル」についてお伝えします。

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※掲載情報は2024年10月18日時点のものです。

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