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週末旅のススメ 日本全国厳選トリップ vol.6

vol.6 京都「伝統と革新のあいだを緩やかに行き交う古の都」

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週末旅のススメ 日本全国厳選トリップ

次世代を担う若手が次々と伝統をアップデート

1200年以上の歴史のなかで、脈々と受け継がれてきた文化や伝統が息づく京都。祇園祭など四季折々の伝統行事は、その精神性や格式が世界中の多くのツーリストを虜にする。なかでも注目したいのは、代々、技を提供し続けてきた老舗の存在だ。
京都には今も100年以上続く老舗が千店以上あるという。長い時間をかけて切磋琢磨してきたからこそ、時代を超えて愛されるモノを作り続けることができた。日本が失いつつある丁寧なもの作りの伝統を、肌で体感するのも京都の楽しみの一つだ。近ごろは次世代を担う継承者たちが新しい試みを行っている。その洗練されたグローバルなセンスに、多くの人々が魅了されている。

京都の新名所・手作り茶筒の老舗が手がけたカフェ

河原町七条のバス停を降りると、ひと際窓の大きい建造物が目に入る。「KaikadoCafé(開化堂カフェ)」だ。カフェを運営する開化堂は、1875(明治8)年創業の手作り茶筒の老舗。銅、ブリキ、真鍮など、素の素材を生かした寸胴のシンプルなフォルムの茶筒は、口に蓋を合わせると「スーッ」と自然に閉まるのが特徴だ。毎日使い込むことで、まろやかなツヤ、地肌の深みとぬくもりが生まれる。

その使い心地や手触りを「実際に肌で感じてもらいたい」とオープンしたのがKaikadoCafé。国の登録有形文化財指定の建物を改装した空間で、「丁寧に淹れた一杯のお茶を飲むための、心地よい時間を提案していきたい」と開化堂の八木隆裕さんは話す。
飲み物にもこだわり、ハンドドリップで淹れるコーヒーは、自らも弟子入りして美味しい珈琲の淹れ方を学んだという「中川ワニ珈琲」のオリジナルブレンドを使う。日本茶は「利招園茶舗」、抹茶は「丸久小山園」。紅茶は海外進出のきっかけとなったロンドンの「Postcard Teas(ポストカード・ティーズ)」のもので、ロゴマーク入りのオリジナル茶筒も用意されている。

京都を代表する伝統工芸を担う「金網つじ」「朝日焼」や「中川木工芸」など、開化堂と縁のある仲間と共に作る道具たちを実際に試し、使う場でもある。
「体感して、いいと感じてもらえた先に、初めてそれぞれのモノについての説明があるのです」
老若男女、国を問わず人が集まるカフェという空間は、今まで伝統工芸に接する機会がなかった人へのきっかけ作りの場となっている。

小堀遠州が茶道具を作らせた遠州七窯の一つ

日本の三大茶の一つ、宇治茶。「朝日焼」はこの地で代々窯を守り続けている。開窯は慶長年間(1596~1615年)のころ。初代は、大名茶人・小堀遠州から指導を受け「朝日」の印を受けたという。それが後に、遠州七窯として数えられた所以だ。
「小堀遠州の綺麗さびに代表されるような、美しく上品な茶の器のよさを後世に伝えて行きたいですね」
そう話すのは、若くして窯を継承した朝日焼十六世 松林豊斎さんだ。
「宇治の陶土は、キメが細かくねっとりとしていて、その土が朝日焼には欠かせません。鹿の背中のように黄味がかった斑点が特徴の鹿背(かせ)は、100年以上熟成させた土の鉄分と釉薬、炎が生み出す複雑な窯変によってもたらされるのです」。朝日焼は鹿背、やさしいグレーの潘師(はんし)、紅鹿背と3種類に呼び分けられる斑点模様が最大の特徴で、一つとして同じものはないという。その伝統と技術は相伝とされ、門外不出になった。

そんな朝日焼にも新しい風が吹いている。工房併設のショップを移転し、日本家屋を改装したショップ&ギャラリーをオープン。宇治川に向け広い開口部を取り、ガラス張りの開放感あふれる空間に、伝統とモダンをミックスした新解釈のお茶室を設えた。茶会はもちろん、ワークショップなど宇治の茶文化を世界に向けて発信する。朝日焼のモダンな商品も充実し、土産物選びにも最適。宇治の新しい観光名所だ。

秘境感たっぷり。奥深い山間の小さな集落

京都の奥座敷、美山町。由良川の源流をたどり、視界が開けると赤いポストが目印の小さな集落に辿り着いた。ここは昔ながらのかやぶき民家がまとまっている「みやまかやぶきの里」。国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている地域だ。

そこから車で約10分のところに「美山かやぶき美術館・郷土資料館」がある。現在、アートギャラリーとして、地元作家の個展を開くなど、現代のライフタイルに合わせ活用されているこの空間は、伝統的技法によって建てられた北山型入母屋づくりで、屋根裏の構造まで、細部をじっくり見ることができる数少ないかやぶき家だ。築年数は150年。北山型の家の特徴は、壁や建具が板戸で構成され、豪雪地帯ゆえ屋根の勾配はきつく、できるだけ早く雪を下ろすため屋根の上に雪割、馬のりという千木(ちぎ)を載せる。千木の数はその家の財力を表すのだという。茅葺屋根はおがら、稲藁、ススキの3層構造で、約40年に一度、すべて手作業で葺替え作業を行う。釘などは一切使わないのだとか。その軒下も間近で見ることができる。
併設する郷土資料館では、美山地区に昔ながらの農機具など生活用品の展示されており、こちらも興味深い。

美山地区に現存する39棟のかやぶき民家は、築150~200年のものが中心だ。今でも実際に人が生活を営む場所でもある。京都市内からは車で1時間半ほど。訪れる人を癒してくれる原風景がここにはある。

文/ナイキミキ(ジャングル・ジャパン)
撮影/秋田大輔

Information about Kyoto

京都へのアクセス
札幌(新千歳)、函館から大阪(伊丹)まで、JALグループ便が毎日運航。伊丹空港から京都市内まで電車や車、高速バスで約1時間~1時間20分。
※最新の運航状況はJAL Webサイトをご確認ください。
https://www.jal.co.jp/

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掲載情報は2020年4月20日時点のものです。

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