vol.32 Patisserie Violette（パティスリー ヴィオレット）

前回に引き続き、訪れたのは胆振エリア。
今回は食卓に、手土産に、贈答に、私たちの生活に欠かせない食品製造加工の会社をめぐり旅！伝統や企業努力、探求心に触れ、私たちの暮らしを豊かに満たしてくれる、人と自然の恩恵を感じました。

洞爺駅のすぐ目の前。大きなクマのぬいぐるみと紫色の看板が目印の、Patisserie Violette（パティスリー ヴィオレット）。店内を彩る本格的なフランス古典菓子は、地元民はもちろん、洞爺湖町に訪れた観光客の口コミでも評判です。
商品を手掛けるのは、オーナーパティシエの尾﨑澄斗さん。
フランス菓子界の巨匠と名高い、藤生義治氏の名店「パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウ」などで経験を積み、ザ・ウィンザーホテル洞爺での初代シェフパティシエを経て、2004年にこの地で開業しました。

ほんのり塩を効かせた個性引き立つ「塩モンブラン」410円（税込）が話題となり、「人気のケーキ屋さん」と謳われる同店ですが、実は、尾﨑さんが何より基本に据え、要に置いているのが「焼き菓子」。
なぜなら、どんなお菓子でも“焼く”作業は必須の工程で、技術や繊細なオーブンの扱いが出来を左右するため、実力が示される土台となるからです。
同店の焼き菓子は、北海道産の発酵バターに、力強い味わいと香りが立つ小麦粉を合わせ、塩モンブランに使用している、洞爺湖町産の自然海塩“カムイミンタルの塩”も隠し味に使用。しっかりと焼き上げ、香ばしい仕上がりに。
フランス・ブルターニュ地方の銘菓「ガレットブルトンヌ」200円（税込）は、紅茶と共にいただきたい、ラム酒が品よく香る人気のクッキーです。

尾﨑さんのキャリアのスタートは、専門学校の教員からでした。教員として教える中で、菓子作りの基礎と、基本の大切さをしっかりと身に積んだ3年間。この経験が原点となっていると言います。
その後、フランス古典菓子を志し、研鑽を積む中で、敬愛する師たちと出会ってきました。
独立してからも、師に恥じない商品をと、ひたすら自分と向き合うお菓子作り。ゴールなき、いつまでもつづく“「最高」への問い“と、まだ、もっと、さらに、という探求心。トレンドを追うのでもなく、流行に媚びるでもない。道を究める道程が、たくさんの人の笑顔と感動につながっていきます。

目指すのは、量産ではなくクオリティであるため、オーバーワークになるようなことはしません。
「こういう店にしては、オーブンもミキサーも小さい設備。うちでは二つの手で出来る範囲がちょうどいい」そう。
“同じものを同じ味で作り続ける技術”が必要とされる、パティシエの仕事。技術に加え、同じ品質のものを作り続ける上で、尾﨑さんが大切に愛蔵しているフランス菓子の古典的レシピ辞典。写真も飾りもなく、見た目も辞典そのもの！長い歴史と共に守られてきた、世紀をまたぐ “フランス菓子の基本”がそこにあります。
“美味しい”は、好みの領域。だからこそ、基本に忠実に、実直に伝統の精神を伝えていく。その枠の中で「どうしたらさらに美味しくなるか？」を見つけていくのだそうです。

縁があれば、場所にこだわらずどんどん新しいチャレンジもしていきたい、と話す尾﨑さん。
心に残る美味しさを追求した、Patisserie Violetteのお菓子に出合ってみてはいかがでしょうか。

※掲載情報は2021年11月24日時点のものです。

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